58話、新しい商売
44日目、朝。
マリアと朝ごはんを食べ、街を二人で見て回る。
ゼストとアリスも、朝は散歩の時間があるようだ。二人で仲良く歩いてるのをみた。
アリスが色々と質問し、ゼストが丁寧に答える。若い人間のアリスより、100年寝ていた魔族のゼストのほうが現代の常識も知識もあるのは面白いな。
……私が一番常識も知識もないのでは?
「そういえばマリア、乳搾りってした事ある?」
「ないのです!したいのです!」
というわけで、朝のうちにゴールデンホルスタインの牧場に向かうことにした。
乳搾り体験、これは子供たちへの教育に組み込んでもいいなと思った。
バター作り体験もだ。自分の手でミルクを搾り、バターをつくったマリアは、それはそれは上機嫌だ。可愛い。
さておき、昼頃。
ゴールドが街にやってきた。
ひとまず、うちの住民になる50人の母子を預かる。
調理班とアリスが誘導し、ひとまずの住居に案内してもらう。あとでその中から親子を別のところに移し、親のいない子供と子供のいない親にはその場でともに暮らして貰うことにする。親役には内職とは別に特別手当もあるからね。
それから、アリスを紹介。
これからは、街の皆が欲しいものと売れるものを紙にまとめてアリスに提出して、それを元にゴールドと交渉してもらう事になった。アリスさん有能すぎ。
今はまだほとんど街全体で共同体として物の売買してるけど、はやめに個人での資産を割り振りたいな。その辺の割り振りとか給料もアリスに全部任せよう。アリスの給料が一番高くていいよほんと。
今回はまた新しい種や、牛や豚なども買い取った。
ゴールドの領地にはブランド牛がおり、とても美味しいらしい。うちでマトモに育てばいいが。
こちらからも、新しい色々を売った。
ハヤトはゴールドに直接、武器売買の交渉を持ちかけていた。対魔物用の装備、必要だもんね。
どうやら定期的に大量の金属を持ち込んでもらい、それらを武器にして加工代を格安でいただくという契約になったようだ。ただし、その武器は自分の使える兵にのみ渡していい事にしたそうで。
「他の人の仕事を奪いすぎるのも、まだ良くないからねぇ。とりあえずは、ゴールドさんが軍拡をする余裕が出来るくらい、だけでいいや」
とりあえず、なんだな。そのうちどえらい事やりそうなセリフだ。ふふ、こわいね。
この契約のお陰で、ゴールドの私兵は騎士団よりいい装備になり、辺境伯軍も新兵に至るまで国軍よりいい装備をする事になる。
ゴールド自身も、性能が低いとはいえ魔剣を手に入れ、とても上機嫌だ。アダマンタイト製の魔剣で、魔力を通すと刀身が冷気を纏う。
さすがに聖剣は売らないようだが、魔剣はそれなりの値段で売ることにしたようだ。そのうち私兵団は全員魔剣持ち、なんてことになるかもしれないな。かっこいいじゃん魔剣兵団。ゴールドの隣にいる護衛の人もめちゃくちゃワクワクしてたし。炎がいいか、氷がいいか、いやいや雷なんかもいいな、なんて悩んでいた。
さて、もろもろ全部をアリスに任せ、私はひとまず迷宮二層に向かう。
扉をくぐれそうな飛べる魔物のアテがあったな、と思い出した。お供は、一応トロル君とメタスラちゃん。
「お、いるねぇ。テイム!」
空を飛んでいる鷹のような魔物をテイム。
知っている鷹よりは大きいが、何メートルもあるほどではない。
アビサルホーク。
アビスの迷宮、深海層に生息する鷹。
飛ぶ力が強く、500kgの獲物をもって数km飛ぶこともできる。
スピードを活かした攻撃が得意で、高空から隕石のように落下しながら相手に突進する技をよく使用する。
体が軽いが頑丈。魔法には弱い。
というわけで、タカちゃんゲット。
これで、とりあえずは地獄迷宮五層の先の、魔大陸に降り立つ事はできるだろう。
近いうちに向かおう。珍しい作物なんかあればほしいなぁ。
帰宅し、晩御飯をみんなで食べる。
今日はゴールドもいるので、いつもより豪勢だ。
新作の酒も振る舞われたらしく、ドワーフもゴールドの私兵たちも楽しく騒いでいる。
ゴールドは酒を飲んではアリスに話しかけ、ごはんを食べてはアリスに話しかけを繰り返している。口説いてるとかでは全くなく、全て商売の話だ。金が恋人ってドーグも私兵団の人も言ってたもんな……。
今日はひとまず泊まってもらい、明日の朝に見送る事になる。
次もまた十日後くらいかな?
また新しい住民が増えるのが、本当に楽しみだ。
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