閑話3、勇者の道
「ここももういいだろう」
「祝勝会はどうするの?」
「その金で遺族にでも見舞いしろってんだ」
この30日で、俺ら勇者パーティは更に力を増した。実力的にも、政治的にも。
今もひとつの街を魔王軍から防衛したところだ。
魔物を狩れば、経験値を得られる。数万の魔物を狩れば、その分俺たちも効率よく強くなれる。
俺たちは、魔王軍が発生するたびに呼び出され、全てを殲滅してきた。
国外にも行った。
大いに歓迎されたが、俺たちを自国に取り込もうとしているのが見え透いている。
魔王軍討伐で実力を見せつけ、手に負えないとわからせてやった。冒険者でいうと、1級の上、特級の下くらいの強さまで上り詰めたのだ。
俺たちは、世界のために戦っている。たかだか一国のためではない。
「俺の聖剣はこの国で手に入れた。次はアヤの聖杖か?リンの聖鎧でもいいけど、どうする?」
「イサムに従うわよ、選んで」
「お、おなじくです」
「……なら、そうだな、難易度順でいこう。魔の森の大霊峰はまだ少し厳しいから聖杖は後回し、どこにあるかわからない深淵魔導書も無理だから、精霊国の迷宮にあるはずの聖鎧が先かな。精霊国いこうか」
「あーあ、この国の特産肉、食べたかったなー」
「……実はな、この無限庫に、城のシェフがつくった料理がたんまり入っているんだが」
「わ!さすがイサム!抜け目ない!」
勇者の能力のひとつ、無限庫。簡単に言うとアイテムストレージだ。別次元に保管するため、時間経過もないという、テンプレ的チート能力。
魔王討伐後は、この能力で行商でもしてゆっくり世界を楽しもうかなと思っている。
まあ、まだ道のりは長いのだが。
「精霊国の迷宮……たしか、全部で10層。鎧系の魔物が出るのよね。鎧系はアンデッドとは違うみたい」
「マナはよく調べてるなぁ。ま、俺たちなら余裕だろう」
「なんてったって、聖女たる私がいるからね!」
「今回はアヤのターンアンデッドは使えないけどな」
「……バフがあるもん……!」
「な、泣かせちゃダメですよ……」
「泣いてないわよコレは」
「そういえば、南の方の辺境伯の羽振りがいいから、協力を取り付けてこいと言われていたな。忘れてたけど。大霊峰も南だし、そのうちそっちも見に行かないとな」
「南……魔の森と、死の荒野、地獄の砂漠があるそうよ」
「なにその頭の悪いネーミング」
「でも、わかりやすいですね……」
南の方は、人が住めるような土地ではない、と聞いた。生息している魔物も相応に強いと。
俺たちの実力が通じるようになるまでは、向かうことはないだろうが……しかし早く強くならないと。
「さて、さっさと精霊国にいくか。……飯は道中で食うぞ。食べたいもの言ってくれ」
「私は肉!」
「私は……さっぱりしたものがいいわね」
「甘いものが食べたいです」
四人の旅は、いまのところ順調だ。
心構えも、前よりはしっかりしている。
もう、目を逸らしたくなる事も、逃げたくなる事もない。
俺が、この世界を救う。
たとえ目の前で、悲劇が起こったとしても。
それが、勇者の進むべき道だ。
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