20230913

数日戻る


・同級生の亡命

夕日の射す電車の中、成田線の滑河、横須賀線の田浦、そんな感じの駅に停車中の車内で友人の西田と話す。

「お前も行かないか。亡命。」

「何言ってんだよ。俺は何もしてねえ。」

「いや聞いただけなんだ。俺はテロに参加しちまったから、もう亡命するしかねえんだ。」

「はあ?いやまさか本当にやったのか?」

かなり神妙な面持ちだったので、本当にやったのかと尋ねる。

「ああ、どのみちもう帰れない。東の浜の方に深夜に船が着く手はずになってる。」

「深夜?今日のか?」

「ああ、だから。そう。お前と会えるのはこれで最後かもしれない。」

「何を急に・・・。」

西田は立ち上がり車内を歩き始め、自分はそれに少しついて行こうとする。

いや、西田を思いとどめようとして、その後ろをついて歩く。

「少し落ち着いたらどうだよ、何もすぐに・・・。」

その間、西田は何も言わない。

遂に西田は電車の外に一歩踏み出す、そして振り返りまた口を開く。

「本当に最後だ、お前も行かないか。」

「・・・無理だ。突然過ぎて無理だ。」

「そうか。ならばここでお別れだ。元気でな、体に気を付けろよ。」

余りにも唐突な別れの話しで未だ唖然としていると、電車のドアが音を立ててしまる。

まるでギロチンのような大きな音、この国での彼の未来を表しているかのような音。

電車はゆっくりと進み始めると、西田は何も言わず大きく手を振りはじめる。

西日の射す茜色の空、ひとりホームにポツンと立ち小さくなっていく今生の別れとなった友人を、窓越しにただ見送るしかなかった。


ここで目が覚める。

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