nodding anemone
不思議ちゃん
一輪目
「お疲れ様でーす」
「おつかれー」
「お疲れ様ー」
片付けを終えてリュックを背負い、先輩や同僚に挨拶をして会社を後にする。
もうそろそろ入社して一年経つ。
周りはいい人たちだし、一時間の休憩込みで九時間業務。
完全週休二日で祝日も休み、残業とかも無く、時間がくればこうして家に帰る事ができる。
普段ならばいつもと変わらない帰宅であるのだが、今日はアニメ専門ショップに途中寄り道をし、楽しみに待っていたライブ円盤を受け取るのだ。
金曜日であるため、風呂や夕食をサッと済ませて夜遅くまで観賞会である。
そんな楽しみな心を持てば、一年経って見慣れた通勤路も色鮮やかに見えるものだ。
本来なら先輩から教わった絵の描き方について思い返したりするところなのだが、今日ばかりは許して欲しい。
肩へかかる重みに頬が緩むけども基本外ではマスクをしているため、周りからの注目を集めることもなく無事に帰宅する。
さっさと風呂を済ませ、弁当に詰めても余った昨日の夕食で今晩の夕食の用意をし、ディスクをセットして用意を整える。
酒は飲めるけども好んで飲むほどではなく、だけどちょっとした特別感のようなものが欲しかったので少しお高めの果実ジュースを引っ張り出す。
「やっぱり、申し込めばよかったかな……」
流れる映像が、聞こえてくる音楽が。
自身の何かを震わせると同時に、現地へと行かなかったことを少し後悔する。
休みを取って行くか悩んだ結果、申し込むのをやめたのである。
もう少し開催地が近ければ迷わず行ったのだが、アニメの聖地での開催であったため、遠かった。
ワケあってハマった時期が遅く、気になった頃には既に三回ライブが行われており、その後行われた二回のライブも機会がなく申し込んでおらず。
好きなグループであるのに、まだ一度も現地に行っていないのだ。
棚に並んでいる物へと目を向け、テレビの中でキラキラと輝いている彼女たちへ視線を戻す。
今までアニメのキャラを好きになることはあっても、声優には全くと言っていいほど興味のなかった自分だが。
ちょっとしたキッカケで興味を持ち、今現在、こうしてどハマりしている。
興味が無かったときは声優やアイドル、芸能人と結婚したいと言っている人の気持ちが分からなかったが、今なら理解できる。
テレビで流しているのはとあるアニメの五人組声優ユニットなのだが、中でも二人、もし出来るのなら結婚したいと思うほどに推している。
彼女たちのことを想いすぎて夢にまで出てくるほどだ。
でも実際にそうなる事なんてそうそうない。
丁度、初日の前半が終わったし『呟いったー』で一先ずの感想を書き、投稿する。
仲のいい人からリプが飛んできたので数度やり取りをし、食べ終えた食器を片付けてから初日の後半へとディスクを入れ替える。
先ほどよりも楽な姿勢で鑑賞を楽しみながらふと思う。
彼女たちも解散したらどうなるのだろうか。
アニメ自体も二期で完結しており、劇場版も公開を終えた。
前任者に倣えばそろそろFINAL LIVEを行って解散してもおかしくはない。
このままダラダラと続けるよりは区切りとして完結してほしいと思っているが、それでも終わって欲しくない思いもあり。
今展開している二つのプロジェクトのどちらかにハマるのだろうけど、胸の内に穴が空いたような虚しさはどうしようもない。
やっぱり終える前には一度、彼女たちのライブを生で見れたらな。
そう想いながら気がつけば気を失うように眠りへついており。
翌朝、目を覚ましたら体調を崩し。
せっかくの土日を療養の為に潰した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます