【つ】【机】引き出しの中には思い出したくない過去がつまっている

家の中で唯一子供の領土権を主張できる場所。親に見つかりたくない物はたいてい机の引き出しの中にある。ただし子供のプライバシーはあってないようなもの。鍵がかかる引き出しもあるがヘアピン一本で簡単に開く。ちなみにどんなに願っても青色の万能ネコ型決戦兵器が出てくるようなことはない。


ショートショート


「お兄ちゃん、お部屋の掃除をするね」

「ちょっと待て!いきなり掃除なんて聞いてない!」

「うん。だって言ってないもん。それにいつ掃除をしてもお兄ちゃんは大丈夫だよね?」

「あ、ああ……もちろんだとも。清廉潔白なお前の兄は何らやましいことなどないぞ!うん!」

「じゃあ、まず机から……」

「ままま、待ってくれ妹よ!いや、妹様!」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「いや、まず掃除といえば床からではないかね!」

「そうなの?」

「も、もちろんだとも。確かネットニュースで「床を制する者は世界を制する」と書いてあったぞ!」

「ホント!じゃあ、世界征服できる?」

「ああ、もちろんだとも!」

「お兄ちゃんを奴隷にして一生愛でることもできる?」

「ああ、モチのロン……って、なんだって??」

「ううん。何でもない。そうか床って偉大なんだね」

「ああ、両手をついて頭を床にこすりつけるだけでどんなことでも許されるんだ」

「すごーい!床さえあれば警察はいらないね!」

「ああ、いらない!」

「じゃあ、掃除始めるね!」

「うををい!妹YO!なぜに引き出しに手をかけるのかYO!」

「てへっ!間違えちゃった!」

「まぁ、間違ったのはしょうがない……なので、その手を放してもらえないかな?」

「何を慌てているのかなお兄ちゃん。大丈夫、間違って開けちゃっても両手をついて頭を床にこすりつければ許してくれるんでしょ?」

「それとこれとは別問題!」

「じゃあ、今夜のごはん大好きなカレーにするから」

「いらん!」

「じゃあ、私がお兄ちゃんの恋人になるから」

「ううっ……いらん!」

「いろいろしてあげちゃうよ♡」

「うううううううう、い、いらぬ!」

「どうしても?」

「どうしても……駄目だ!」

「それでも、もし開けちゃったら?」

「もし開けてしまったら、伝説の魔王が降臨すると同時に、俺の両手はへし折られ、頭は床にめり込むだろうさ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る