14-7

 アレンさんとシルフィードが大きく目を見開く。

 と同時に、イフリートが感嘆の叫び声をあげた。


「こ、これうみゃいぞ!」


「カリカリ、ザクザク! 食感もすごく楽しいですが、カレーが……!」


「そう! カレーが全然違う! ものすごくコク深くなってる!」


 そうでしょうそうでしょう。

 でもね?


「カレー自体は一緒だよ」


 そう言うと、アレンさんとシルフィードが顔を見合わせる。


「とてもそんなふうには……」


「うん、同じとは思えない! なんで!?」


「それは油のせい。油が合わさることでカレーの味がより濃厚に感じられるの」


 一応、焼きカレーパンのほうも焼くときに油を使ってはいるんだけれどね? もちろん、お店の焼きカレーパンも同じ。オーブンに入れる前に表面にたっぷりの油を塗っている。

 でもやっぱり、たっぷりの油にドボンと入れて揚げるのには敵わない。


「満足感もだいぶ違いますね。油のせいか、どっしりとお腹にたまります」


「絶対こっちのほうが美味しいよ! ティア! お店のカレーパンはこっちにすべきだよ!」 


 シルフィードが前足でテーブルをバン番叩いて力説する。


 そうだね、私もそうしたい!


「そうできない理由があってね……」


 小さくため息をついた私に、シルフィードが小首を傾げる。


「もしかして、ハンバーガーやホットドッグと同じ理由?」


 以前、神殿の作業員さんたちにハンバーガーやホットドッグ、フライドポテトをふるまったとき、シルフィードが同じように『これを売るべき!』と力説したんだけど、そのときも私は『今はできない』って答えた。


 理由としては、現状、パンは私一人で焼いている。オープン時間までに黙々とひたすら焼いて、そうして作り上げたストックを一気に売るというスタイル。

 だから、どうしてもお客様の手に届くまでにタイムラグがある。アツアツの作り立てを食べてはもらえない。

 そういう理由で難しいんだって――シルフィードには説明していたの。


 そりゃ、パン屋にもハンバーガーやホットドッグは売っている。そのほとんどが常温だ。つまり、作り立て熱々じゃないことが多い。


 だから、できないことはないの。

 もちろん、それだってすごく美味しいしね。


 でも私が前回作ったのは、パン屋のハンバーガーやホットドッグじゃなくて、ファストフードのできたてを味わってほしいものだった。熱々のフライドポテトも添えていたしね。


 パン屋さんの冷めても美味しいハンバーガーやホットドッグとなるとまたレシピが変わってくるんだよね。フライドポテトはそれこそ作り置きなんて絶対無理だし。


「うーん……。たしかに作り立て熱々は美味しいけれど、カレーパンにかんしては冷めてもそれはそれで美味しいから、作り置きができないわけじゃないかな」


「え? じゃあ……!」


「カレーパンにおいての問題は、揚げるための大量の油なの」


「油?」


 シルフィードがきょとんとする。

 その隣で、アレンさんは納得した様子で頷いた。


「ああ、なるほど……」


「え? どういうこと?」


「油ってすごく高いの。大量の油を使って揚げるとなると、それだけで材料費が跳ね上がっちゃう。とてもじゃないけれど、ほかのパンと同じ価格帯では売れなくなっちゃうのよ」


「そうなの?」


「うん、庶民向けのお店で出すにはちょっと……ってお値段になっちゃうの」


 この世界で主に流通している食用油はオリーブオイルと、ラードや牛脂などの動物性油。まぁ、どちらもかなり高い。

 そして、悲しいことに、どちらもカレーパンにはあまり向かなかったりする。

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