第2話。子供っぽいアナタとぷくぷくの私。

 父の話しから二日目が過ぎた朝、セシリーがノックもせずに、私の部屋に駆け込んで来た。


「ステルラーッ」


 バンッと勢いよく開けた、私の部屋の扉が壊れるんじゃないかしらって程の、音に私は寝ていたベッドから飛び起きた。


「セシリー…ッ又貴女はっ何度も言っているじゃな「そんな呑気な事を言っている場合じゃ無いわ!今直ぐ顔を洗って身形を整えるのよ!」


「へ?だって…まだ朝食の時間じゃないでしょ?」


「時間の問題じゃないのよっ!!良いから早くなさい」


 いつも元気な姉が、今日は元気を通り越し青ざめた顔で私のぷくぷくの手を掴みベッドから引き摺り出した。


「ああっもうっ!なんで朝からアンタの手はベタ付いてんのよっ!!夜中お腹でも空かせ誤って自分の手を噛っていたの?」


 何とも酷い話しだ…幾らなんでも自分の手を噛っる程はしないわ?

 せめて、隠しオヤツを「早くなさいっ!」


「はぃいぃい!」いつに無くセシリーの気迫に負け、つい甲高い事を出しながら返事をしてしまった。


 私の双子の姉のセシリーは、元々主語が無い人、だから一体朝から何故慌ただしくさせるのかを話してはくれ無い。


 いつも、事が終わった後に説明をすると言う厄介な人格でもあった。

 まあ…其れに対し聞かない私も私なんだが…と言うより聞いた所で「いいから早く」としか言わないんだもん。良い加減慣れちゃうよ。


 セシリーとメイド達のお掛け?で早々に身支度を済ませる事が出来た。

 その間も、セシリーは私の身支度をしているメイド達に「ああじゃ無いこうでも無い」と指示を出していた。


(あれ?今日、何処に出掛ける約束でもしてたっけ?)


「うんっ!!良い感じよ?ステルラとても似合ってる!やっぱり流石は私の可愛い妹だわ」


 パンッと両手を叩き私をドレッサーの横に有る全身が映る姿鏡の前迄連れて行った。


「はりゃ…これが私?」


 鏡に映る私は、今までパーティでお洒落して来た私とは異なり、自分でも驚いてしまう程の仕上がりだった。


 鏡の前の私は、淡いプラチナブラウンの髪に代々「サムソン」家に受け継がれる「アースアイ」の瞳がメイド達の化粧によってくっきりと映えていた。


 同じ双子でも、私とイヴリンの「アースアイ」の色は少し異なる。


 セシリーの瞳は翠色がベースになった「アースアイ」に比べ。

 私の瞳は蒼がベースになった「アースアイ」だった。


 これは、「聖女・ラファエラ」の「オッドアイ」の「天」と「大地」を意味する事から来ていると言われている物だ。


 この宝石の様な瞳は、細身の姉セシリーもだけど、プニプニ体型の私にとっても自慢だったりする。


「さっ!早く直にリカルド様が屋敷に来る時間よ?パパもママも客間で待って居るわ。今日はリカルド様と朝食会をするんだって」


「・・・・っは?」


 朝から何を冗談を言っているのか…それとも悪戯好きなセシリーの事だ。

 きっと、手の込んだドッキリで私を驚かそうとしているに違いない。

 など、あれこれ考え暫く彼女の悪戯に付き合う事にした。


(全く…朝からこんな手の込んだ悪戯をするだなんて少し度が過ぎるわ)


 悪戯好きな、姉に呆れながらも「はいはい、今行きますよ」と彼女と一緒に食堂に向かう事にする。


「ちょっと!ステルラ食堂じゃ無いわよ、客間だと言っているでしょ?」


「もうっ分かったって!本当はリカルド様じゃ無くベルナルドが来るんでしょ?」


 そう、偶に彼は朝食を私達家族と一緒に取る事があった。

 だから、今回もきっと彼が来るもんだと思っていた。


「何を言っているの?今彼は遠征中で来ないわよ」


「へ?だったら一体」


 いつもの、彼女なら最後まで我慢が出来ず途中から「プッ」と吹き出し笑う筈なのに…今日に限っていつに無く真剣な表情で見つめて来る。


「…アンタまさか、私が可愛い妹をドッキリに掛けたんじゃないかと思っていたの?」


「えっ?いやぁ…それはあの」


 セシリーは呆れた顔で、両手を腰にあてジト目で問い詰める。

 だって…普段が普段なんだものだと反論しょうものなら彼女の論破で返されるに違いない。


「もうっ良いから早く客間に行きましょう」


 痺れを切らしたセシリーは、私の手首を「フニ」と掴み強引なまでに客間へと向かった。


 客間へと向かった私達は、扉の前で私達を待ち構えていた執事が「リカルド様が御到着されております」と一礼をしノックをした次の瞬間、扉をガコンと開けた。


 何が何だか訳が分からない私は、開かれた客間に目を向ければ、此方に背を向け座っていた一人の男性が、ソファーから立ち上がり此方を振り返り一礼をした。


「初めましてサムソン伯爵家のご令嬢様方私は「クラウディ」家のリカルド・クラウディでございます」


「お前達失礼だぞ。クラウディ卿に挨拶を」


 父の一声でハッと我に帰った私とセシリー。

 だって…一度パーティでお見受けしただけだったし。

 あの時だって、そんなにハッキリと見ては居なかった。

 其れは、セシリーも同じなんだろう、彼女も私と同様に彼に見惚れていた位だったから。


「はっ初めましてリカルド様。私が姉のセシリーで此方が妹の…ステルラ?ステルラってば」


 彼に、カーテシーで挨拶をしているセシリーは、呆然と立ち尽くしている、私に肘で小突いて来た。


「あっあのっ失礼しました。妹のステルラでございます」


 イヴリンに続く様に、私も慌てふためいてカーテシーで挨拶をすれば、私の頭上から「クスクス」と笑う声が聞こえて来た。


「これは失礼」


 クスクス笑うリカルド様の笑顔は、まるで童話やお伽噺に出て来る、王子様のみたいにキラキラと輝いて見える。


「さっクラウディ卿。此方に食事の用意が出来ています、お前達も座りなさい」


『はい、お父様』私達は声をハモラせながら父が促しす席へと移動をした。


 席に座れば、何故か私はリカルド様の隣に、私の前にはセシリーがその横には母が座り、真ん中には父が座っている形へとなっていた。


 私の横に座って居るリカルド様から、微かに良い香りが…その香りだけでお腹が…いや胸が一杯になってしまう。


 別に、一目惚れとかでは無く…不思議とリカルド様は人を惹きつけてしまうそんな魅力的な人に見えた。


 あのパーティで、他の令嬢達が言っていた様に、確かに彼は他の令息達より子供っぽく見える…。

 でも、それはそれで彼の魅力の一つなんじゃないのかしら?


「…ルラ…ッテルラッもうっ!ステルラッてば」


「あっはいはいはい」


 しまったっつい考え事をして、皆の話しを聞いて無かった。

 考え事から、無理矢理現実に引き戻った物だから声が裏返ってしまう。


「全く…お前って奴は」はぁー…と頭を抱え呆れる父に「いつも呆っとする癖を直しなさい、お客様の前で失礼ですよ」頰を赤らめ注意をする母と。


「あら、お母様?ステルラの場合「脳内散歩」をしているだけなんですわ」などセシリーは茶化す感じで私を弄る。


 それに対し両親は「うんうん」と頷いてはリカルド様の前で赤っ恥をかく私。


「クククッ」と笑いを我慢している彼を見ると、本当「子供っぽい」と言うより「少年」が大人になった様な人、あれ?少年が大人?大人が少年?

 コホンッやっぱり彼が笑うと素敵なのには変わらないのだ。


 オレンジに光に依っては、茶色が混じる髪に海よりも深い深海の「碧」の瞳の君。


 時折、私が生きて来た中で見た事も無い程の「色気」が彼から漂うのは気の所為かしら。

 ん?あれ?私、今なぜ彼から「色気」が…なんて思ったんだろう?


 目が合い「ニコ」と言うより「ニヘラ」と笑う彼が可愛くて胸が踊ってしまう。

 思わず、フォークを加えたままの私は、彼の笑顔に胸が高鳴り固まっている、そんな私を見ていたセシリーの視線に気が付いた。


 ハッとセシリーから感じる視線に、目を向ければ『見惚れてるじゃん』と口下をニヤッと上げ口パクで弄って来る。


『別にっ』セシリーの弄りにプィッと彼から顔を反らし大好きなベーコンエッグに手を付けようとしたけど…全く喉に通らない。


 普段なら、ベルナルドの前でもパクパクと食べても気にもならないのに。

 けど、何故か今日は、食べてる姿を見られるのは、恥ずかしく思えてならなかった。


「ステルラ譲?食が進んで無いみたいですが…何処かお体の具合でも?」


「はっ?あのっいえっ食べています」


 驚いたっまさか急に彼が話し掛けて来るだなんて?

 それに…さっきから気にはなっていたんだけど…隣に座って居る彼の腕って私より細くない?


 肌もきめ細かだし…女装をしたらきっとめちゃくちゃ美人さんになるんじゃないかしら?

 等、女装をした彼を想像をしたら自分が情けなくなって来た。


 想像した彼の女装姿を消す様に、頭を横にブンブン振っていたら又、目が合ってしまう。


 流石に、私の態度に母が気付き「ステルラッ」と普段から聞き慣れ無い声で私の名を呼ぶ。


「ごっごめんなさい…」


 母に注意をされ悄気げた私を見たリカルド様は「面白い人だ」とクスクス笑う彼がやはり…無駄に可愛い。


 こうして、何故だか私だけが知らされていなかった、リカルド様とサムソン家の「お忍び」朝食会が幕を閉じた。


 緊張で食べた気がしない私と、セシリーに両親はリカルド様を、屋敷の前馬車までお見送りする事にした。


 最初から最後まで好印象だった、彼に私は「本当に彼の許嫁として見てくれるのかしら?」と言う不安な気持ちで一杯だったが。


 其れは現実となって私の心が打ち砕かれる。


「今日は本当にありがとうございました」


 馬車の前で両親に深々と頭を下げる彼に両親は「そっそんなクラウディ卿頭をお上げになって下さい」


「いいえっ今日は本当に来て良かったです。私のお相手になるセシリー譲にも会えたし。お忍びで来たかいが有りました」


『・・・っは?セシリー?』


「わっ…私ですか?」


 リカルド様のまさかの言葉と、私より以上に家族一同の目が点になっている。


 そう、彼の言葉は私達家族全員凍らせたのは言うまでもなかった。




  ◆◇◆◇◆後書き◇◆◇◆◇


 ここまで読んで頂き本当にありがとうございました(*´艸`*)





































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