第45話 伸七郎へのアドバイス

 俺が、伸七郎に、


「初林さんのことが好きならば、明日にも告白すべき」


 という話をすると、伸七郎は、


「明日って、もう間もなくだよな。俺はまだ舞居子ちゃんに対する気持ちが、自分でもよくわかっていないんだ。そんな状態で、告白というのは、話が進み過ぎている気がする」


 と言う。


「お前の心の奥底では、初林さんに対する恋する気持ちがだんだん湧き始めていると俺は思う。そうでなければ、初林さんが他の男と仲良くしていても、それを受け入れることができると思う。でもお前にはそれができないだろう?」


「舞居子ちゃんがそれでいいと思うんだったら、幼馴染として、それを受け入れなければならないと思っている。思ってはいるんだけど、お前の言う通り、受け入れられなくなってきている自分がいる。どうしてこんな気持ちになるんだろう? お前の言う通り、舞居子ちゃんに対する恋する気持ちが湧き上がっているということなんだろうか?」


「俺はそう思っている。そして、お前の心の奥底では、舞居子ちゃんを恋人にしたいと思い始めていると思う。まあ明日すぐにとは言わない。でもどんなに遅くても夏休みまでには決めた方がいいと思う。お前、さっき、俺に『好きな人がいたら、お前の方から告白してもいいと思う。夏休みも近くなってくるし、二人でどこかへ出かけたりして、いい思い出を作りたいだろう?』と言っていたじゃないか?」


「確かにそういうことは言った。俺だって、そういう欲求は持っている。高校二年生の夏休みは、一度しかないからな。だって、できれば好きな女の子といい夏休みを過ごしたとは思っていないことはないんだ。でも俺はサッカーに全エネルギーを注いでいかなきゃならない。そういう欲求を持たないように努力をしてきた。俺がそうしたいい思い出を作れそうもないからこそ、お前にはいい思い出を作ってほしいという意味で、さっきはお前に言ったんだ」


「お前の俺に対する思いやりは、ありがたいと思っている」


「まあ、こうは言っていても、俺だって、好きな女の子と思い出を作りたい気持ちは、湧き出してくる時はある。特に夜、ベッドで横になっている時は、どうしてもそういう気持ちが湧き出してくるんだ」


「それならば、なおさら初林さんに告白すべきではないかと思う」


「お前の言うことは理解してきた。理解はしてきたんだけど、俺は、自分でもまだまだ舞居子ちゃんへの想いがどういうものなのかわからないんだ。お前のいうように、心の奥底では舞居子ちゃんを恋にしたいと思っているのかもしれない。告白をするかどうか、この数日で決めることにするよ」


 伸七郎はそう言うと笑った。


「期待しているぜ」


「いろいろありがとう。やっぱりお前はいいやつだ。ここまで親身になってアドバイスをしてくれるやつは、なかなかいないと思うぜ」


「褒めてくれてありがとう。俺も、お前と友達になれてうれしいぜ。なにせ今まで、友達らしい友達いなかったからな」


「それは、お前の良さを知る人が多くなかっただけのことだ。さっきも言ったけど、特に女性たちの人気は急激に上がってきている。今日のように、友達の為に一生懸命になるというところが理解されてきたら、モテモテになるかもしれないな」

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