2.トップランカー
『スノーダイヤモンド』と言えば人気ランキング上位で、
そんなマイナーパーティーの配信を見てる奴でも知ってるくらいスノーダイヤモンドは有名で人気がある。確か女の子三人組で全員索検一級のはずだから、こんな15階層程度は屁でもないはず。一体何があったんだろう。
そんなことを考えながら氷に穴をあけて通気口を作りつつ、氷柱を壊すために左の手のひらを押し当てる。そのまま力を解放すると氷柱に少しずつヒビが入って行った。洞窟の天井まで届いている氷柱を全て崩してしまうと氷漬けの彼女や俺自身にも危険が及ぶ可能性があるので、生存確認のための最低限に留めておく。
割れた氷の間から救命補助キットのプローブを差し込み確認したところ、氷柱に封じ込められた三人とも呼吸が確認できた。AIの判定でも危機的状況ではないと出たので、あとは救命隊が来るのを待つことにする。
「紗由聞こえるか? 救命緊急度はB判定だったよ。
このまま救命隊を待つ、OK?」
『到着まであと7分程度の見込みだって。
引き続き周囲の警戒ヨロ。
なんでこんな洞窟一杯の氷があるんだろうね』
「これってこのパーティーの『氷姫』の能力じゃねえのか?
自分の能力制御に失敗したとか?
でも一級なんだからそんなアホなことするわけねえしなぁ」
俺が通っている
その能力は瞬間冷却で、通常はモンスターを凍らせて動きを止めるスタイルらしい。だが彼女の能力特性から考えると、水中にいるわけでもないのにこんな氷柱はできないはずだ。つまりどこからか大量の水が現れたことになり、そんなことがあり得るのかどうかは謎である。
ちなみに俺の能力は、ランキングでは下位のほうだがそれなりに実用性が有る。と言っても実際に役立ったのはこれが初めてかもしれず、左手の手のひらで触れた物を高速振動させると言う地味なものだ。他にも超回復と肉体硬化も持っているが、こちらも能力ランキングでは中位と圏外なんてひどい有様である。
『まあ何があったのかは事情聴取ではっきりするでしょ。
ウチらが教えてもらえるかどうかはわかんないけどさ。
でも救助ポイントは入るからちょっとしたお小遣いにはなるはずだよ』
「でもお前、こないだ前借りしたからプラマイゼロってとこだろ。
随分つぎ込んでるけど、新型の試作はうまくいってないのか?」
『まあまあいい感じになってきたよ。
もう少しで実地テストへ出せると思うから期待しておいてよね。
今は送受信データが大きすぎてラグが出ちゃうからその最適化中ってトコ』
「あまり難しいことはわからないけど、この間みたいに記録不良は無しだぜ?
記録未提出はペナルティポイント大きいんだからさ」
俺は探索隊を組んでいる妹の紗由と雑談しながら、亀裂の入った氷柱の前で救命隊の到着を待っていた。
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