第1話・OLを丸裸!?
「見つけた……アレは、おっぱいじゃない」
「そう」
短く答えたミノリは一筆書きのような無表情でそのOLに近づき、一言二言何かを話した後、戻ってきた。OLは膝から崩れ落ち、タイトスカートが汚れることなど気にもとめず、おいおいと、あるいは、ぎゃんぎゃんと泣き始める。
「……何をしてきたんだ?」
「死刑宣告」
かつて幼馴染「田中ミノリ」はふんわりとした誰にでも優しい、聖母を彷彿とさせる美少女だった。しかし今、おれの隣にいるミノリに聖母の面影はない。
「手続きもせずにね、地球に長期滞在するエイリアンは『死刑』って決まってるの」
「ずいぶんと厳しいんだな……」
「地球は私たち■■■の占領下だから。好き勝手はさせない」
しばらくすると真っ黒なタクシーが女の側に停まった。自動で後部座席の扉が開く。女はまだ泣いている。ミノリの死刑宣告という言葉に偽りがないのならば、当然だろうと思う。
「その、猶予はないのか?」
「猶予?」
女は運転手に肩を掴まれ、ほとんど引きずられるようにして後部座席に押し込まれた。ヒールが片方、地面に綺麗な形で立っている。
「見つけてすぐに『ハイ、死刑』はその……あまりに無慈悲というか……」
「あれは冗談よ。母星に強制送還するだけ」
ミノリはニコリとも笑わずにそう言ってのけた。笑えない冗談だ。
「初仕事、お疲れさま。見込み通り役に立つわ、その服が透けるメガネ」
「それはどうも」
おれはミノリの方を向く。やはり服の下は黒黒とした皮膚で覆われている。
「ちょっと」
サッとミノリは胸元を隠した。
「見ても楽しくないでしょ? エイリアンの裸なんて」
おれは口を一度への字に曲げた。それから何となく、歯を見せずに笑った。ミノリの目は薄く、細くなっていく。
「……ミノリはずっと、昔からエイリアンだったのか?」
「そうよ」
少なくともミノリと一緒にお風呂に入っていたような幼少期、彼女の皮膚は肌色だった。成長すると尻尾の青色が消えていくニホントカゲのように、段々と皮膚が変化するのだろうか。
「いつまでこっち見てるつもり?」
上目遣い、というよりも睨み付け。おれは名残り惜しくも視線を外した。
「あ……」
「どうしたの?」
鼓動が早くなる。口の中が渇き、舌が上顎に張り付く。
「いる」
手のひらと、脇の下からはダラダラと汗が流れ出る。
「どれ?」
おれはオフィスビルから出てくるOLの群れを指差した。
「ぜんぶ」
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