花嫁候補
カズは父の仕事の関係で日本で生まれた。
アメリカに暮らす祖父が亡くなり、ひとりになった祖母を心配した両親はアメリカに行くことになった。
学業途中のカズと妹の涼子は日本に残った。
父の秘書をしていた結城が相談役として彼らの元に共に残った。
ルナがカズに出会った中学生の頃、ルナの動向を探る人物がいたことにルナは気が付いていなかった。
それが結城であり、ブリュヴェールだった。
財閥の哀しいさがだった。
相手の懐に入る前に、よく調べ、よく理解する。
財閥界の常識。
この頃から花嫁候補にルナの名前が挙がっていたのだ。
そうでなければ日本から来た、どこの馬の骨ともわからぬ女の子をすんなりと受け入れるはずがない。
ルナが知ればがっかりするだりうか。
そのうち知るところとなり、またそれに慣らされていくのだろう。
「ルナに会って来たか?」
「いや、会わずに帰って来た」
「どうして?」
「あんな幸せそうなルナちゃん見ただけで満足」
ヨッシーは12時間のフライトで疲れているようだった。
しかもとんぼ返り。
「せっかく遼平さんに帰りの便のチケット購入してもらったのにすみません」
「いや、俺にも責任があるから。そうか」
「だいいち、連れて帰ったところで、あんなブルジョワ生活させてあげられませんし」
ピラティスのレッスンの最中でしばらくお待ちくださいと言われ、応接室に通された。
アンティーク家具がほどよく配置され、どれひとつとってもゴージャスだった。
メイドさんが運んで来たティーカップも、ナオママが大事にしている貴重なコレクションだろう。いや、コレクションではない、日常使いにしているのだから。
そんなことを考えながらヨッシーは運動の苦手なルナがするピラティスのレッスン風景を見たくなり、応接室を出た。
大きなガラス窓の向こうにルナが笑っていた。
確かカズさんといった、彼から赤ん坊を受け取るとジャグジーに浸からせた。
ルナちゃんの赤ちゃん?
ヨッシーには時間の観念がなくなってしまい、その光景はあまりにも幸せそうなファミリーの姿だった。
良かったね、ルナちゃん。
心からそう思えた。
誰かが言っていた、初恋は実らないって。
これが恋だったのかもわからないけど、ルナちゃんと過ごした時間は幸せだったよ。
ありがとう。
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