第26話 世界樹探索-2
先にお断りしておきます。
本作では、作者が得意かつ好きな探索、冒険の描写が多過ぎる小説を離れて、描写をスキップしつつストーリーを進める小説を書こうとしてきました。
そのため、今現在書き溜めた『世界樹探索及びその後始末』のところのストーリーは、探索の様子を大きく省いてストーリー的展開のところばかり書いております。
(作者がひたすら探索の描写すると、一挙一動から自然の様子まで全部書き始めます)
先日アンケートを取って思ったのですが、もう少し描写しても良かったかなと今更ながらに思っています。
その部分については、需要があるようであれば後日番外編という形で細かい探索の描写を書くつもりですので、コメントお願いします。
えーつまり、世界樹探索の細かい内容を期待していた方はごめんなさい、ということです。
作者自身も何に需要があるのか模索している次第です。
ご意見あればDMなどへ是非お願いします。
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「ロボ後ろから崩せ!」
『バウッ!』
正面から押し寄せる木人形とトレントの集団を俺が一手に受け止め、壁を駆けて集団の背後に回ったロボが後方から叩く。それに押されて前に踏み出してきたやつから、前で槍を構える俺が突き刺し、刺さったところから炎系の魔法を流し込んで炎上させていく。
「くっそタフだなッ! とぉ!」
そして壁際まで追い込まれたところで、前方に衝撃波を放ち隙間を作って強引にそこを突破。再度仕切り直す。
「埒が明かねえなこれ。ここまで厄介になるとは……」
トレントと木人形の攻撃は、棍棒による殴打か、枝や蔓を操っての攻撃ばかりなので避けることはそこまで難しくはない。偶にウッドパペットの中に魔法を使う個体も混ざっているが、それもこの場所には適していない土魔法のようで、岩塊や石でできた槍を飛ばしてくる程度でそれほどきつくはない。少なくとも、ダンジョンの中にいるウッドパペットというモンスターのように、弓や剣などの武器を持っているわけでもない。
ただ、とにかく数が多い。シンプルな、武器を使用しないモンスターの攻撃や、複雑で手数が多いわけでもない魔法でも、相手が数十、あるいは百以上と集まり、更に戦闘しているエリアが狭いとなるとそれなりに対応に困る。
「げっ、消火してやがんのか。しかもまた復活してるし」
更に厄介のは、相手モンスターが倒れないということだ。
破壊は出来るのだ。強さ自体はそこまでのものでもない。俺が剣で切れば普通に切断できる。
だがそれだけだ。殺すことは出来ない。
切っても、叩き潰しても。まるで植物が繋がるように。切り株から新しい芽が生えるように。植物同士が繋がり成長するように。大量のトレントと木人形が、それぞれ復活したり隣の個体と合体したりとすぐに復活して迫ってくる。
更に水分を大量に含んだ木なのか生半可な火魔法ではくすぶるだけで燃えないし、燃やしたところで木人形の水魔法で消化されてしまう。
「世界樹ごとふっとばすのは無しだよな……よし、ロボ! 来い!」
『バウッ!』
「帰るぞ! 撤収!」
『バウッ!?』
「めんどくさい! 作戦練って出直すべし!」
まだモンスターどもを蹴散らしているロボを呼び寄せ、大部屋唯一の入り口を突破して外へと逃げる。本当に単純な強さ自体は大したことがないモンスターなので、ロボの体当たりでも普通に蹴散らされていた。
幸いにして、大量のトレントと木人形がゾンビ映画のごとく部屋から流れ出してくるなんてことはなく、そのまま今日の探索は終了として、俺とロボは世界樹の外へと向かった。
******
「あかんっすな」
“おつおつー”
“お疲れ様です”
“相変わらず激しい戦闘で”
“今日は一際すごかったな”
仮拠点まで戻って装備を解き、温かい湯を沸かして適当な葉っぱで茶にして一息つく。この世界樹の根本は、世界樹と滝のせいでずっと日陰な上に、世界樹とか湖の水の気化熱などでかなり涼しい。むしろ肌寒いぐらいまである。だから暖かい飲み物で一息つくのが心地いいのだ。
「今日のはちょっとやばかった」
探索を始めてはや5日ほど。初日以降も順調にあちこちへと歩みを進めつつ、それを簡単にメモ帳に記して記録しつつ探索を続けた。この記録は、後で拠点に戻った後大きなノートや紙にまとめて地図だったりレポートを作成するのに使う。旅ではなく探索方面の俺の作業だ。
“なんかいつもの戦闘と違ったな”
“異質な感じがした”
“あれ、殺せないのか?”
“他のモンスターと大分違うよなあ”
「それな。なんか……他のモンスターと違う感じがするんだよねえ」
今日始めて遭遇したモンスター。トレントとダンジョンでは名付けられる動き木のモンスターと、素材が木で出来た装飾のない操り人形のような木人形。この二種類が、今日始めて発見したモンスターだ。
世界樹内では他にも、初日の大きな爬虫類系の鼬のモンスターを筆頭に、おもに大型化した小動物や、蝶や蛾、蜂、甲虫など多数の虫系統のモンスターと遭遇している。特に虫系統のモンスターは好戦的な種が多く、遭遇する度に戦闘になっていた。まあ大体は障壁である程度攻撃を受けて攻撃方法を把握した後両断して片付けているので大した問題はない。
そんな中で今日新しく探索に進んだ先、木の幹に囲まれて出来た自然の大部屋の中に群れで待機していたのが、あのトレントと木人形の集団だった。
「明らかに、他のモンスターどもとは違ったな」
世界樹の中に生息しているモンスターは、当然ながら生物としての生態を持っている。互いに捕食、被捕食関係にあったり、木の実や花などから栄養を得ているのも遠目から確認出来ている。虫系以外の、鳥や鼬に似たモンスターも普通に住処を持ち、上下に複雑ではあるものの森のような様相を呈している世界樹内部で生きていた。
他にも、木人形の方は見たことがないがトレントの方は普通に自然に存在しているのは見たことがあるし、襲われて戦闘したこともあれば、押し寄せる大火から一緒に逃げ出したこともある。
それらのモンスターと今日のモンスター。はっきりと言葉には出来ないが、確かな違いを俺は感じていた。
「なんつーか……ダンジョンのモンスターみたいなんだよな」
“ダンジョン?”
“どゆこと?”
“すぐ襲ってくる的な意味で?”
“確かに世界樹の中はダンジョンみたいだけど”
「なんつーかな……敵と、そこで生きている生物の違いって言えばわかりやすいか?」
ダンジョンのモンスターというのは、基本的には
まさしく、人間を攻撃するためのシステム。だからこそ昼夜でダンジョン内の環境が変わらないという探索のしやすい状況にもあるのだが。
「あれは……ただ人間を排除するためのシステム。攻撃するためのシステム。そう俺には思えた」
“どゆこと?”
“あー、ダンジョンのモンスターについてよく言われてるやつか?”
“確かにあいつら、俺たちみたら協力して襲いかかってくるよな”
“にしたってシステムとは……”
となると、ここにもあるのか。俺の頭を悩ませる理由。このダンジョンの先の世界で、もっとも厄な発見。
ダンジョンという、地上にも出現した、どこから来たかも、何に由来するかもわからぬ特殊な施設。まるで人を、知的生命体を育てるためにあるかのごとき場所。
(わかんねえな……ここにもダンジョンがある、となったら、それは何のためだ?)
コメント欄を他所に思考にふける。温かかったお茶も冷え、ロボが退屈そうにあくびをしている。
と。
「あ?」
『ウゥルルルルル……』
突如として、世界樹の巨大な気配が揺らいだ。同時に、頭上が一気に騒がしくなる。ギャースギャースグアーグアー。頭上を見上げれば、世界樹の上の方に生息しているであろう多数のワイバーンに怪鳥、グリフォンなどが飛び立ち、他にも飛べないモンスターは世界樹の側面を駆け下りている。
「なんか、来るな。ロボ、撤退準備」
『ウルルルルル』
ずっと唸っているロボに、急いで鞍を取り付け、その他の荷物も縛り付けていく。その間も、世界樹からはモンスターはどこにこれほどのモンスターがいたのかと言いたくなるような数のモンスターが溢れ出し、上にはまるで雲霞のごとくモンスターが空を飛んでいた。
『ガウッガウッ!!』
「わかった」
何が起きるか見届けようと思っていたが、ロボが切羽詰まった様子で促してきたので観察を諦めてその背中に飛び乗った。
直後。先程までを遥かに上回る大きな音とともに、上の方に広がる枝を押しのけ、へし折って。
巨大な何かが、姿を現した。
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作品のブックマーク数が1万を越えました。
皆様ありがとうございます。
またギフトくださった方も誠にありがとうございます。
今後も小説で飯を食っていくことを目標に面白い小説を頑張って描いていきたいと思います。
作者の他の作品もぜひご覧ください。
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