第5話 芸術って?
「「うわ〜?」」
沙友理さんと裸のまま一緒に手を繋いで寝室へ戻る。
改めて部屋の惨状を目にして、二人で揃った声を上げてしまう。
何しろ、沙友理さんが着ていた洋服と下着を僕が全部駄目にしてしまったからね。
散らかったタオルと汚れたティッシュの山を見て、
「ん〜、これは…………この残り香はすぐには消えないわね。ここまで酷いと片付けるのに時間がかかりそうね?この次は、ラブホでしようね!」
「……………………そうだね。張り切りすぎました。反省します、ごめんなさい?」
「いいのよ〜、気にしないで!久々に満足できたしね。真樹さんとじゃ、ここまで荒々しくしてもらえなかったから。」
「え〜、兄貴って、あんまり積極的じゃ無いのかな?」
「まあ、普通かな?でも、私としては物足りないのよね。回数とか、内容もね。だから、克也君から『合格したら、沙友理さんを一日自由にさせてほしい』ってお願いされて、嬉しかったし期待してたのよね。」
「僕は、本当に沙友理さんがお願いを聞いてくれるか半信半疑だったし、嫌われたらと思ったら怖かったよ。」
「もうっ、私達結構長い付き合いなのに、怖いんだ?」
「長いからこそ、今の関係が壊れるのが怖いんだよね。」
そう、僕達はもう2年以上師弟関係を続けている。
放課後は、直接アトリエに来て沙友理さんから指導を受けてきた。
できれば、離れたくない位に依存しつつあるから勇気を出してお願いしたんだけど、結果は不合格で、願いだけは叶ってしまった。
「私から『師弟関係』を解消する事は絶対に無いから安心して。何が有ってもね、絶対だからね!」
「嬉しいんだけど、泣いていいですか?」
「何言ってるのよ!じゃ、私も着替えるから少し待ってて。」
「沙友理さんが着替えるのを見ててもいいですか?」
「いいわよ〜、今更何を見られても恥ずかしいこともないしね!」
ベッド脇のタンスから取り出した、清楚系の白の下着を身に着け、クローゼットから水色のワンピースと茶系のパンツスーツが掛かったハンガーを取り出して両手に掲げながら、
「克也くぅ〜ん、どっちがいいと思う〜?」
「僕が脱がせて良いのなら、ワンピースですね。」
「じゃ、次の『デート』にはこのワンピースにするね!今度は破かないでね?」
と言いながらシャツを羽織りパンツスーツを着込んでいく。
「次に僕の作品が売れたら弁償するから、そのワンピース目茶苦茶にして良いかな?」
「デート中は、帰れなくなるから駄目よ!」
「あ〜、失敗した!今の着替えを撮影しておけば良かった。」
「着るところが良いんだ?脱ぐ所じゃ無くて?それくらいなら、今度撮らせてあげるわよ?誰にも見せないと約束してくれるならね。」
「良いの?」
「それが、芸術だよ!」
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