第670話

「で、どうする?」


「まずは父上に会いに行きましょう」


「わかった」


クロードと建御雷神は領都に向けて移動を開始した。


途中、魔物を退治している兵士に遭遇する。


以前はこんなところに魔物はいなかったはずだ。


出てきても小物で兵士が排除に動くことはなかった。


「あんたらは・・・?」


周囲を警戒していた兵士の1人が問いかけてくる。


「クロード・フォン・プロミネンスです」


「はっ?領主様の一族がこんなところにいるはず・・・」


「待て。クロード様。お久しぶりです」


「あぁ。久しぶりですね」


待ったをかけたのはかつてクロードが指導したことのある兵士の1人だった。


装備を見るにこの部隊の責任者となっているようだ。


「クロード様は行方不明と聞いていましたが・・・」


「色々ありまして・・・。ところで、父上は?」


「領主様なら領主館にいるはずです」


「ありがとう」


「我々も領都に戻りますのでよろしければご一緒いたします」


「よろしくね」


この申し出はありがたい。


クロードの顔を知らない人もかなり増えているはずだ。


物事をスムーズに運ぶには便宜を図ってもらえればかなり助かる。


「クロード様。よろしければ私の馬にお乗りください」


そう言って立派な馬の手綱を渡される。


跨ってみれば嫌がるそぶりを見せずよく訓練されているのがわかる。


「この馬。高かったでしょ?」


「給料のほとんどが吹き飛びましたが自慢の愛馬ですよ」


「僕が乗ってしまってよかったんですか?」


「えぇ。クロード様ならこいつも喜びますよ」


そんなことを話していると領都の壁が見えてくる。


壁の上には警戒の為なのか平時より兵士の数がかなり多い。


「物物しいですね」


「状況が状況ですからね」


「魔物の被害はやはり増えていますか?」


「そうですね。私が責任者になるぐらいですから」


クロードが厳しい訓練を課したとはいえ本来であればまだ一般兵のはずだ。


それが小隊とはいえ責任者をしているのだ。


それだけ人手が足りていないのだろう。


兵士達のおかげで門の出入りはスムーズに済んだ。


「私はこのままクロード様をお連れする。お前達は手続き後、英気を養え」


「はっ!了解しました」


「少ないですがこれをどうぞ」


クロードはそう言うと貨幣の詰まった革袋を渡す。


「これは?」


「皆さんの働きと手間賃みたいなものですよ」


「ありがとうございます。お前ら羽目を外しすぎるなよ?」


「わかっております」


そう言って兵士達は嬉しそうに宿舎の方に去って行った。

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