第638話

「さて、お主は魔力や神力はどこから生まれると思うかの」


「神力は神々が地上で奇跡を振るった際の残滓ですが魔力は龍脈や人の感情から生まれるのではないですか」


「その通りじゃ。では、質問じゃ。溢れかえっているはずの魔力はどこに行く」


この世界は魔力が乏しい。


乏しいというかどこかに集められ人が使えないようにしているのだろう。


そして、月の女神である月詠が出てきたことから推測するに答えは1つ。


「月・・・ですか」


「正解じゃ」


「月で何かが起こっているのでしょうか」


「まだ余力はあるがの溜まりに溜まった魔力を誰かに押し付けられるなら押し付けたいわけじゃ」


「それが私だと・・・」


「うむ。下手な奴に押し付けて悪用されるわけにもいかんしお主なら負荷にも耐えられるじゃろう」


「拒否権は・・・」


「あるわけなかろう。さぁ、お主の部屋に行くぞ」


そう言うと月詠はクロードの部屋へと迷いなく突き進む。




「はぁ・・・。それで部屋に来た理由は」


「お主の体に陣を書き込むためじゃ。上の服を脱いでくれるかの」


「わかりました」


「そこに座って背中を向けるのじゃ」


背中を向けると月詠の指が触れてくる。


触れてくると同時に痛みはないのだが突き抜けたような感じを受ける。


指が動くたびにゾクゾクした感じが突き抜ける。


「うむ。これでしまいじゃ」


その言葉と同時に何やら力が流れてくるのを感じる。


これが月に溜まっているという魔力だろうか。


陣の構築は無事に終わったようだ。


と、ここで廊下からバタバタと誰かが駆けてくる音が聞こえる。


「はぁはぁ・・・。月詠あんた何考えてるのよ」


バン。


とドアを音をたてて開けて入って来たのは天照大神だった。


「遅かったの。もう手遅れじゃ」


「あんたこの方は…」


「…なら好都合じゃろう。本人に返すだけなのじゃから」


「それはそうだけど・・・」


「まぁ、今のお主にはちんぷんかんぷんじゃろう」


「いい機会だから聞いてもらおうかしらね」


昔、この世界でも神々は好き勝手にしていた。


天罰と言って人々を簡単に殺してしまったり。


それに怒った神がいた。


神々に自分の軍勢を率い戦いを挑み力を削いでいった。


だが、問題も起きた。


神々の戦いで大量の神力がばら撒かれ魔物や妖怪、悪魔の活動も活発になってしまったのだ。


そこでその戦いを挑んだ神は人々に戦う術を与えたのだという。

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