第587話

「そうだ。3人にはこれを渡しておきますね」


そう言ってクロードが取り出したのはマントだ。


「これは・・・」


「これは防寒と耐熱効果のある品です」


「防寒と耐熱・・・」


「いつ来るかはわかりませんが猛吹雪の部屋と灼熱の部屋があるのでその対策ですね」


クロード自身が着ている服は全天候対応の術式の組み込まれた最高級品だ。


なのでマントは必要ない。


だが、恵まれた天候で暮らしてきたハイエルフ3人組には必要だろう。


「そんな部屋があるのか」


「まぁ、一種の嫌がらせですね。901層から先は正直ボーナスステージですし」


901層から先は守り手がいないわけではないが900層を突破できるなら問題ない相手しか出てこない。


そこで801層から900層はそこに至れないように作成者の悪意で出来ている。


ランダムワープの部屋もその一種だ。


通常であれば何度もトライすれば対策を取れる。


しかし、ランダムワープさせられることにより対策が無駄になることも多い。


次に来る部屋がわからないというのは精神的にきついものがある。


「まぁ、動きづらいかもしれませんが我慢してくださいね」


「わかった」


クロード達は次の部屋に踏み込む。


次の部屋は罠部屋だった。


着慣れぬマントに襲いかかる罠。


ハイエルフ3人の動きは悪いがクロードは高速で動き回りフォローする。


続いて次の部屋は灼熱地帯だった。


思い出してマントを渡しておいて正解だった。


耐熱効果のない装備でこの部屋に足を踏み入れた場合あっという間に汗だくになり水分を持っていかれる。


そして、待っているのは倒れたところにピクシーの魔法が飛んできて殺される未来だ。


対策の効果もありこの部屋は難なく突破した。


続いての部屋は極寒の世界。


これまた対策をしていなければあっという間に体温を奪われ身動きがとれなくなるという悪質な仕掛けだ。


この部屋も対策をしていておかげであっさり突破できた。


クロードは知らないことだったが全部屋に当たるというのも実は悪いことではない。


難易度の低い部屋から順番に攻略させられることにより戦闘に慣れることが出来る。


クロード達は順調に各部屋を攻略しかなり速いペースで20部屋を踏破した。


セーフティーエリアでそれぞれ休憩をしっかりと取る。


ここまで攻略したのは60部屋。


残り940部屋。


その様子を精霊王がじっと観察していた。

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