第576話

イフの家に戻ってきたクロードは大量の料理を作っていた。


完成した料理は次々にイフのアイテムボックスに消えていく。


全ての料理が完成した頃にはすっかり遅くなっておりそのまま眠ってしまった。


翌日、朝ごはんの準備に起きたクロードであったがどうやらイフは出かけているようだ。


しばらく待っているとイフはシルフィーとカランを連れて戻ってきた。


「今日はこの2人がクロードと一緒にダンジョンに潜ってくれるわ」


クロードは何となくこの言葉で状況を察した。


料理に釣られてやってきた生贄もといお手伝いと言うわけだ。


「本当にいいんですか・・・」


「あぁ。料理を作ってくれるならいくらでも力になろう」


「イフったらあんなに美味しいものを独り占めしてるなんて」


2人にハイエルフの料理事情を聞いてみると採ってきた果物をそのまま食べたり肉を軽く焼いたりと手間をかけることはないのだという。


それに対してクロードの料理は出汁をとったり、素材そのものの味を生かしつつも相乗効果で比べ物にならないものとなっている。


「まぁ、本人達は納得しているからいってらっしゃい」


そう言ってイフに送り出された。


741層も他の階層と同じようにゴーレムで埋め尽くされていた。


そこにクロードは躊躇なく斬りかかっていく。


クロードの動きに驚いた2人であったが慌ててドロップ品の回収に動き出す。


750層で一度昼休憩を取ることになったのだがせっかくきてくれたのだからとクロードはいつもよりも手間をかけて料理を作った。


ハイオークの肉を特製の液体に漬け込み柔らかくしてから焼いてその上にパイナップルを乗せる。


野菜がトロトロになるまで煮込み丁寧に灰汁を取る。


料理が出来上がる頃にはシルフィーとカランはすっかり匂いにやられていた。


多めに作った料理は瞬く間に2人の胃袋に消えていく。


「そういえば、イフさんは何をしているんでしょうか」


「あぁ。それなら、他のハイエルフを連れて食材集めをしているはずだ」


「食材集めですか」


「我々は食材の良さに現を抜かして料理というものをしてこなかった。だが、君の作ってくれた料理で目が覚めたのだ」


「そうそう。貴方程の腕にはなれなくても少しでも美味しいものを食べたいっていう基本欲求を思い出したのよ」


3大欲求の1つである食欲。


クロードの料理はハイエルフ達の忘れていた欲求を大いに刺激したのであった。

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