第560話

次に足を踏み入れた部屋は薄暗かった。


少しずつ目が慣れてきて見渡してみると広大な空間にいくつもの鍵付きの書棚が続いているのがわかる。


そのうちの一つに手をかけ解錠を試みようとしたその時、どこからともなく黒猫が現れた。


「主よ。鍵を開けるのはお勧めしないにゃ」


「ね・・・猫が喋った・・・」


「驚くのはそこかにゃ」


「か、可愛い」


イフさんは何やら手をわさわさしている。


「君は一体・・・」


「我は主の使い魔にゃ。今は主の力が落ちているから低燃費モードだけどにゃ」


「主って僕のことなのかな」


「そうだにゃ。まぁ、こんなところで話もにゃんだしついてくるにゃ」


そう言って黒猫はどんどん歩いていく。


慌ててクロードとイフは後を追いかけた。


しばらく進むと丸テーブルに椅子が2脚置いてあった。


黒猫は何の躊躇なく丸テーブルの上に乗る。


「座るにゃ。吾輩が答えられることなら何でも答えるにゃ」


「え~っと。まずは君の名前からかな」


「本来の名前は理解できないと思うにゃ。だからクロとでも呼ぶといいにゃ」


「じゃぁクロって呼ぶけどクロは一体何者なの」


「主様の使い魔にゃ。本来の主様は物凄い力を持っているにゃ。吾輩以外にも強力な使い魔とか眷属がいるにゃ。ただ、今の主様は人間として生を受けているから本来の力を使えてないにゃ」


「クロードの本来の力ってどれぐらいなのかしら」


「主様が使っている力は本来の力に封印を施して封印しきれなかった力にゃ。しかも、その封印しきれなかった力も使いきれていないにゃ」


「現状でも化け物なのに・・・。北欧の神々に細工が出来たのが不思議なぐらい」


「それはそうにゃ。連中に主様の正体がバレないように細工を施したからにゃ。もし、正体を知っていたら絶対に手を出さないにゃ」


「クロードの正体って何なのかしら」


「それは言えないにゃ。ただ、今の主様は役割を果たして休暇中にゃ。普通の人として生きるのが望みだったから地球で苦労しない家庭に生まれたのにゃ」


「その割には両親が事故死したり自分も災害で死んだけど・・・」


「それは北欧の神々が介入した結果にゃ。抵抗することもできたにゃ。だけど、それをすると主様の望みが叶わにゃいと思って連中の思惑通りにしたにゃ」


「クロ。君は僕の味方ってことでいいのかな」


「吾輩の役目は主様が平穏無事に生活できるようにすることにゃ。何でも言ってほしいのにゃ」


「君の忠誠心はわかった。ありがとう」

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