第533話
「エリーゼ様。荷物の積み込みが終わりました」
「そうですか。それではすぐに出発しましょう」
エリーゼ達、学生に与えられた任務は保存食を中継点まで運び込むことだ。
遠方の保存食加工工場でも転移門を利用すれば驚くほどに旅程を短縮することが出来る。
しかし、それでも安全とは言い切れない。
各地の領主達の兵士は戦争に駆り出され領地を巡回する兵士の数は減っている。
森などの魔物が発生する場所を遠回りして避けても盗賊などといった脅威に襲われる可能性は残っていた。
今も子供ばかりが護衛についていると知って盗賊の襲撃を受けていた。
「落ち着いて対応すれば大丈夫です。牽制しつつ魔法で相手の数を減らします」
子供と言っても彼等は王都の学園で成績優秀な者ばかりだ。
確実に賊の数を減らし手痛い反撃を食らった賊達は散り散りに逃げてゆく。
ベストは賊を全て討伐することだがそこまで手が回らない為、逃げる賊は放置する。
そして、生き残った賊は最低限の治療を施し亡くなった賊の遺体は適切に処理をする。
この処置を怠ればゾンビといった不死系の魔物が生まれる可能性が出来る為、それなりに時間を取られる。
一通りの作業を終えたエリーゼ達は急いで出発する。
盗賊達に襲われたため予定より遅れている。
事情を説明すればそれなりの理解は得られるだろうがそれでも時間通りに運搬できるに越したことはない。
なにせ、運搬の記録はエリーゼ達の成績に加味されるのだから・・・。
トラブルに見舞われたエリーゼ達だったが予定時刻ぎりぎりで中継点へと到達した。
中継点は最初はただ戦場に送る物資を一時的に保管する場所であったが現在ではちょっとした都市へと変貌している。
将来的にはゲルマン王国と北方の国々との貿易都市として機能するようになるだろう。
エリーゼ達、学生組は中継点の兵士に無事物資を受け渡し与えられた自由時間を満喫していた。
発展途上の都市らしくあちらこちらで建設中の建物が目に入る。
エリーゼが先輩の女生徒とやってきたのは洒落たカフェテリアだ。
紅茶とお茶請けを注文してテラス席へと腰掛ける。
「はぁ・・・。被害は受けなかったけれど盗賊に襲われるのは何回目かしらね」
「ほんと、嫌になるわ」
エリーゼ達が護衛をするようになってから盗賊に襲われるのははじめてではなかった。
というか、襲われなかったことの方が少ない。
エリーゼに配慮され成績優秀な者が集められているが女生徒の数が多いのが狙われている原因だったりするのだがそのことに本人達は気付いていなかった。
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