第522話

ゲルマン王国王都に本拠地を置くアリア教会。


そこに所属するシスター見習いであるアンジェリカも王国の要請に従い補助として急造された陣地入りをしていた。


暇を持て余すこともなく先輩達に指示されて治療用の薬の生産をしていた。


雑多な人間の集まったこの陣地で若い女の子であるアンジェリカにちょっかいをかけてくる人は少なくない。


普段はさり気なく教会関係者がガードしてくれていたのだがこの時は不在だった。


「君、可愛いね。今夜あたりどうかな」


「いえ、仕事がありますから」


「そんなこと言わずにさぁ」


そんな現場に遭遇したのはクラウスであった。


クラウスは学校を卒業後そのまま王国第三騎士団に入団を果たしており下っ端とはいえそこらの兵士よりも権限を持っていた。


「そこ、何をしている」


アンジェリカに絡んでいた兵士はクラウスを見るなり逃げるように去っていった。


「大丈夫でしたか」


「助かりました。ありがとうございます」


「当然のことをしたまでですから。自分はこれで失礼します」


クラウスの目下の仕事は陣地内を見回り規律を維持することであった。


しかし、このような事件は頻発しており上層部を悩ませる頭痛の種となっていた。




「はぁ・・・。それにしても助けてくれた騎士様。どこかクロードに似てたなぁ。クロードは今頃、何をしているのかしら」


薬の調合をしつつもアンジェリカの心は上の空だった。


何回も繰り返した作業であり目を瞑ってでも出来る自信があるが戻ってきた先輩にその姿を見られ怒られるアンジェリカなのだった。




「へくしゅん」


世界樹攻略を続けるクロードは急にくしゃみをして周囲の精霊に心配されていた。


「クロード。風邪でも引いた」


「いえ、そういうわけではないんですが」


「急ぐ気持ちもわかるけど少し休んでもいいんじゃないかな」


手紙を受け取ってからのクロードは一度大きな休憩を挟んだ以外は休憩をほとんどとらず急ピッチで世界樹を登っていた。


そのおかげもあり現在は250層を超えていた。


精霊達は元々疲労とは無縁であるし数がいることもありローテーションを組んで対応しているため破綻することなく順調に成長を続けている。


250層からは鳥型ではあるが大型の猛禽類が中心となっており速さもそうであるがタフさも備えている。


しかし、達人の域に達しているクロードは急降下してきたところを確実に捉え1撃で屠っていた。


精霊達は一撃で倒すことは出来ないが手数でカバーしつつ動きを制限するように魔法を放つことで場を整えていた。

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