第518話
ファールハイト達慎重派は陣地構築に着手しつつ交戦派の出陣を見守っていた。
交戦派を指揮するのはロマニア・フォン・クラリーネ侯爵である。
決して無能ではないのだがどこか焦りのようなものも感じさせ不安を覚える。
大敗することがなければいいのだが・・・。
物資の調達は順調だがまだまだしなければならないことは山ほどある。
先着している兵士達の割り振りや今後来るであろう兵士の受け入れ準備。
ゲルマン王国は主導権を握っているが命令権を持っているわけではない。
下手なことをすれば内輪でグダグダになってしまう。
他国に配慮しつつも指揮系統の構築は急務だった。
幸いなことにシルフィード皇国とドラゴニア王国が協力的なのが救いだった。
2国ともクロードが関わった国でありゲルマン王国に恩義を感じてくれている国だ。
弟の功績に助けられているのは情けない話だがそれでも自分に出来ることをするしかない。
ロマニアは騎兵だけを集めた先発部隊を率いて中立地帯を北上していく。
事前に密偵や偵察部隊の情報で脅威がないことを確認している。
ロマニアは何を慎重なことをと慎重派のことを鼻で笑う部下達の気を引き締めつつ自ら先陣をきっている。
ここで一番槍として活躍すれば最近落ち目である自派閥に少しでも有利な状況を作り出せるはずだ。
ゲルマン王国は王権が強いがそれでもまったく貴族達を無視することは出来ない。
事実以前は、ロマニア達の派閥は王に意見を言える程強力な派閥だったのだ。
それが、クロードが台頭してきてからというものの影響力が落ちてきてしまっていた。
神童だか何だか知らないが参謀として参戦しているファールハイトのことも気に入らない。
ロマニアはプロミネンス侯爵家が大嫌いだった。
「ロマニア様。そろそろ中立地帯を抜けます」
「うむ。だが相手が見当たらんな」
「歩兵を待ちつつ斥候を放ちます」
「うむ」
ここまでスピードを重視してきたが騎兵だけで進軍するのは得策ではないだろう。
歩兵が来るのを待ちつつ斥候が持ち帰ってくる情報を待つしかない。
斥候が持ち帰ってきた情報は唖然とするものだった。
人がまったく存在していなかったのだ。
村の跡地は焼き払われ人っ子一人いない。
元々略奪するつもりはなかったが現地で食料を補給するのは難しいことが判明した。
歩兵部隊も続々と到着していておりシンラ帝国の領土に踏み込む。
かなりの距離を進んだはずだが未だシンラ帝国側の兵士と遭遇することはない。
通常ならありえないことだが慎重派の言を無視して侵攻をしたのは自分達だ。
不気味さを感じながらもこのまま何の成果もあげず引き上げるわけにはいかなかった。
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