第510話
目覚めたクロードは魔物を倒しつつも悩んでいた。
進化の話をすれば彼等、精霊達は頷くだろう。
だが、しかし、本当にそれでいいのだろうか。
自分の考えを押し付けるわけではないが仲良くなった精霊達のことを考えれば悩まずにはいられない。
「クロード。ずっと難しい顔をしているね」
「すみません。少し考えごとをしていました」
「昨夜、ノーム様の気配を感じたけどそれと何か関係があるのかな」
中々鋭い推察である。
「はぁ・・・。上位精霊になる為に進化の話を聞きましてね」
「あはは。なんだ、そんなことか。僕らはクロードが上位精霊を必要とするなら喜んで従うよ」
「消滅するわけではないにしろ自我を結合されるというのは恐ろしいとは思わないのですか」
「それが精霊にとっては自然なことだからね。でも、そうだね。クロードが僕達を大事にしてくれてることはわかったよ。それなら違う道を示してあげる」
「違う道ですか」
「うん。たまにね、進化できない精霊もいるんだ。それでも、上位精霊になることは出来る」
「そんな方法があるのですね」
「ひたすらに魔物を倒して上位精霊に至るまで経験を貯め込むんだ」
「なんだ、今やってることじゃないですか」
「楽な道ではないと思うよ。本来なら相性の良い精霊同士がくっついて何十倍もの力を身に着けるのにたいして単独でその領域まで至らなきゃならない。それに数が数だしね」
今、クロードに付き従う精霊は数百体を超える。
そして、これからも数が増え続けることが予想される。
そんな数の精霊を魔物を倒して上位精霊に導こうとすれば時間がいくらあっても足りないはずだ。
それでもクロードは決意した。
彼等、全員を進化ではなく経験を積ませることで上位精霊に導こうと。
「あはは。悩んでたのが馬鹿らしいですね。経験値が必要ということならいくらでも付き合います」
クロードはペースを上げて魔物を屠っていく。
それを精霊の情報網を使ってみていたノームは苦笑いしていた。
クロードが進もうとしているのは茨の道だ。
だが、精霊達にとっては嬉しい誤算だった。
進化して上位精霊になるのが確かに自然なことだ。
しかし、相対数は少なくなってしまう。
今現在、上位精霊の数が不足していることを考えると少しでも多くの上位精霊が必要だった。
精霊の個々を大事にしたクロードのこの行動は歓迎すべきことであり非難するようなことではなかったのである。
クロードは階層をゆっくりではあるが確実に上がっていく。
現在102層。
世界樹踏破はまだ始まったばかりである。
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