第496話

長い年月エルフ達から話しかけられることを待っていたのにそれが出来なかった幼い精霊達のことを考えると胸が痛む。


もしも自分が誰からも認識されずない者として扱われたらどう思うだろうか。


自分だったら気が狂っているかもしれない。


それを思えばこうやって不貞腐れている幼い精霊達はマシなのだろう。


不貞腐れていた幼い精霊と長いこと話をした結果、お礼として誰も知らない秘密の場所を教えてくれるらしい。


先導する幼い精霊達の後を追うと結界のようなものがあることに気が付く。


結界は薄い膜のようなもので通り抜けると草原が広がっており聖獣であるユニコーンがたむろっていた。


ユニコーンは色々な使い道があるが生息数が少なくとても貴重な存在だ。


幼い精霊達が言うには時間はかかるが他の動物と同じようにリポップするらしい。


それならばということでこの場にいたユニコーンを全て狩らせてもらった。


肉や角に骨など様々な品を回収してまだ周りきれていない場所を周ってから世界樹の3層を目指した。




世界樹の第3層はどこを見渡しても麦の海である。


ゲーム時代ではあまり魅力を感じなかったが現実となった今、これだけの麦があればどれだけ多くの人が救われるだろうか。


ニーパス領では当然食料生産に力を入れており資金を投入して開墾作業を行わせているがここと比べれば雀の涙に等しい。


クロードは寄ってきた幼い精霊達の相手をしつつも収穫作業に乗り出した。


農作業など生まれてこの方したことはないが少しずつ作業に慣れ効率的に収穫作業を進めることが出来るようになってきた。


途中で休憩して収穫したばかりの麦を魔法で乾燥させ使う分を脱穀しアイテムボックスから薬品を使う際に使うすり鉢を取り出して細かくする。


出来上がった粉を水で溶き粘りけが出てきたら水団の準備は完了だ。


切っておいた野菜や肉を鍋で煮込んでいき調味料で味を調整し最後に先ほど作った水団を適当な大きさにして鍋に投入していく。


水団が茹で上がり浮いてきたら完成だ。


さっそく口に運んでみる。


肉や野菜の旨味がしっかりと沁み込んでいるが麦の質も他では考えられないほど高品質なようだ。


クロードはあっという間に食べ終え再び麦を収穫する作業に戻った。


幼い精霊達はクロードが作業する姿を眺め声援を送ってくれていた。


クロードは数日をかけて世界樹第3層の麦を刈りつくした。


世界樹の中は過ごしやすい環境が整っておりそのまま寝ても問題がないぐらい快適だった。

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