第492話

『起きて、起きて』


『遊ぼ、遊ぼ』


「ん、んっ~」


クロードは耳元で囁かれて目を覚ました。


「クロード。大丈夫」


「イフさん。どれぐらい眠ってましたか」


「君が眠っていたのは3日程だ」


クロードは聞いたことのない第3者の存在に気が付く。


「貴方は・・・」


「ハイエルフで風の長をしているシルフィー・エルランドという」


「クロード・フォン・プロミネンスです」


「そこの馬鹿が危険を考えずに突っ走ったみたいで申し訳ない」


「馬鹿じゃないもん」


「ならば何故彼は3日も眠ったままだったのか」


「そ、それは・・・」


「あはは。こうして無事でしたしお気になさらずに」


「ところでクロード。何か変わったことはないかしら」


「耳元でイフさん達以外の声が聞こえますね。後は何やら水色の光が見えるんですけど」


「ふむ。どうやら精霊の姿が見えているし声も聞こえるようだね」


「私には何も見えないんだけど」


「イフは水の精霊と相性が悪いからね。先ほどから幼い水の精霊が彼に話しかけているのさ」


「これが精霊ですか」


「常に見えていると不便だろう。今は目と耳に無意識に魔力が通っている状態だ。それをカットしてごらん」


クロードは言われたとおりに目と耳の魔力をカットしてみる。


すると先ほどから聞こえていた声と水色の光が消えた。


「最初は苦戦するかと思ったけどうまくいったようだね」


「教えてくれてありがとうございます」


「礼にはおよばないさ」


「これからクロードはどうするの」


「様々な精霊と交流を深めるために世界樹中をまわろうと思います」


「うん。それがいいだろう。エルフ達も下層の精霊達と触れ合いながら精霊の扱い方を学ぶのが一般的だ」


「私も付き合うからね」


「はぁ・・・。イフ。お前は戻るんだ。仮にも長の一人が仕事をほっぽりだすわけにはいかないだろう」


「仕事といっても他の子達もいるんだし」


「500層まで単独で昇ってきてもらう。これは長老会議で決まったことでもある」


「私は聞いてない」


「いなかったからな。それにこれは試練でもある。単独で挑んでどれだけの精霊と契約できるのかそれを私達は見たいのさ」


「話はわかりました。イフさん。必ずたどり着いてみせますから待っていてください」


「仕方ないなぁ」


「クロード君。これだけは伝えておこう。昇ってくる過程で採取したものについては我々は何も言わない」


「ありがとうございます」


クロードはここに来るまでに十分な食料を確保しているが可能なら10層までに追加で確保しておきたい。


クロードにとっては嬉しいことだった。

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