第477話

クロードは今だに村に滞在していた。


本当は村の若者達の指導を終えて旅立とうと思っていたのだがこの村を領有する領主から会いたいとの要請を受けてのことだ。


身分を明かして領主に手紙を書いた手前このまま旅立ってはまずいとの考えのもと領主の到着を待っていたのである。


その間、暇を持て余したクロードは村長の許可を得て回復薬の瓶を作る窯を作り村人達に瓶の作成方法と回復薬の作り方を伝授していた。


今はクロードが随伴することで村を守る若者達が怪我をした場合回復魔法で治療をしているがクロードがいなくなった後も安定して狩りをする為に必要な保険であった。


余った回復薬については村の外に輸出することで貴重な外貨を得ることとなり村にとってはいいことづくめだ。


不足していた食料についても村を守る若者達が森で魔物の肉や果物などを取ってくることで補われ自給自足で何とかなりそうである。


村の抱えていた問題は粗方片付き他に出来ることはないかと考えていた所に領主一行の到着を村長から伝えられクロードは村の門まで出迎えに出るのであった。




「わざわざの出迎え感謝する。そなたがクロード卿で間違いないか」


「はい。私がクロードです」


「この地の領主をしているハイネル・フォン・クロッカスと申す」


「色々手を出してしまいましたがご迷惑になっていないといいのですが」


「いや、迷惑などとは。こうして実際に目にしてみると感謝しかない」


「ハイネル卿。私も挨拶してよろしいか」


「これはメイアン殿。申し訳ない」


「私はアライアン王国で外交官をしているメイアン・フォルムです」


そういって挨拶してくれたメイアンの耳は尖っていた。


「メイアン殿はもしかしてエルフですか」


「よくご存じですね。我らの種族は珍しいと自負していたのですが」


エルフは基本的に世界樹の根本の集落で暮らしており滅多なことでは外の世界に出ない。


メイアンのような者は珍しい部類に入る。


「クロード卿は旅の途中とのことでしたが目的を聞いてもよろしいか」


メイアンの目が鋭く光っている。


「迷いの森を抜け世界樹での修行をすることです」


「人の身で迷いの森を抜けるのは大変ですぞ」


「そこは大丈夫です。これがありますから」


そう言ってアイテムボックスから1本の杖を取り出す。


「それは世界樹の杖ですか。それをどこで手に」


「神様より授かりました」


「神様からですか。それを聞いては私に止める権利はありませんね」


メイアンはむやみやたらに人が迷いの森に入るのを阻止する目的でアライアン王国に仕えていたのだが神様の意思ということで諦めるのだった。

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