第464話

密偵達は巧妙に隠された階段を慎重に降りていく。


そしてたどり着いた空間に戸惑った。


ダンジョン特有の感覚に似ていたからだ。


慎重に調査を進めていく。


地下空間はかなり広いようで手分けして探索を進める。


しばらく進むと小部屋があり中からは女性の苦し気な声が聞こえる。


中を覗きこめば大量のゴブリンの姿が目に入ってくる。


ゴブリン達の中心には拘束され身動きの取れない女性の姿も確認できる。


あまりの光景に唖然とさせられる。


ゴブリン達は女性を犯していたのだ。


意味もなくこのようなことをしているとは考えにくい。


考えられるのは繁殖行為だ。


魔物の生態は実は解明されていない。


今までは自然の生き物が魔力を取り込むことで変異したものや魔力の濃い場所で自然発生すると考えられていた。


ゴブリンは弱い魔物ではあるが群れの数が増えると上位個体が発生しやすくなると言われている。


魔物をどうやって操るのかという疑問があるがある程度行動を誘導できるなら繁殖させられた大量のゴブリンと戦わされ疲弊したところに人間の軍隊が突撃してくることを考えれば脅威でしかない。


密偵達は断腸の思いでその場を後にして地下空間の調査を再開した。




結果からすれば等間隔に小部屋がいくつもありどの部屋でも胸糞の悪い気持ちを味わった。


また、この空間は拡張がまだまだ続けられておりゴブリン達が拡張作業を行っていた。


密偵達は屋敷を後にして調査結果をまとめた書簡を作り鳩に括り付けると解き放った。


彼等は気持ちを切り替えてシンラ帝国の内情を調べ続ける。




密偵達が送った情報はすぐさまゲルマン王国諜報部の長の元に送られた。


冗談だと思いたいことが書かれていたが国王に報告しないわけにもいかずすぐに謁見の手続きを行う。


謁見の許可はすぐに下りた。


「お主から謁見の申し込みとは何かあったか」


「シンラ帝国に放っている密偵から報告がまいりました。詳しくはこちらをご覧ください」


ポセイドスは差し出された書類を素早く読みこんでいく。


「これは事実なのか」


「私も最初は真偽を疑いました。ですが命がけで職務を遂行している者達が不確かな情報を送ってくるとは考えられません」


「それもそうだな。しかし、この情報を得てもどうにかするのは難しい」


「不戦協定をこちらから破るわけにはいきませんか」


「それもあるが動かせる戦力が足りぬ。シンラ帝国と正面からぶつかればいくら優秀な我が軍でも壊滅する恐れもある」


「相手は軍事大国ですからね。それぞれの軍は不仲とは言えこちらから仕掛ければ全ての軍が対応しかねませんか」


「とにかく今は力を蓄えることを考えねばな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る