第431話
「これで治療は完了ですね」
「ありがとうございました」
「ところでお二人はどんな魔物にやられたんですか」
「白銀に毛皮が輝く狼です。あんな魔物が近くの森にいるとは思いませんでした」
近くの森はクロードも鍛錬の為に利用していたのでそんな魔物が生息していないのはよく知っていた。
しかし、クロードには思い立つものがあった。
白銀の毛皮を持つ狼。
それはロキの眷属であるフェンリルの可能性が高い。
「情報提供に感謝します。安静にしてくださいね」
そう言い残しクロードはカリオンの元に向かった。
「カリオン。ちょっといいですか」
「なんでしょうか」
「近くの森にフェンリルがいる可能性があります」
「お伽話にでてくるフェンリルですか」
「これから調査に向かおうと思うのですが」
「クロード様。それは騎士団にお任せください。非常事態に対応するのも我々の役目です」
「そうはいいますが放っておけば被害が広がるかもしれません」
「それでもです。クロード様は侯爵家の一員ではありますが他領の領主でもあられるのですからお立場をお考え下さい」
「カリオンがそこまで反対するとは思っていませんでした」
「侯爵様から危険がないようにと言いつかっておりますから」
「わかりました。ですが騎士団には十分注意するように伝えてください」
「はい。伝令を走らせます」
そう言って護衛としてついてきた若い騎士団員をカリオンは呼びつける。
「クロード様の話だと相手はフェンリルの可能性が高いそうだ。団長にくれぐれも気を付けるように伝えてくれ」
「わかりました。ひとっ走りいってきます」
そういって若い騎士団員は騎士団の駐屯地まで走っていった。
若い騎士団員が騎士団の駐屯地に到着すると丁度バンネル団長達が出陣するところだった。
「バンネル団長」
「なんでこんなところに。クロード様に何かあったのか」
「いえ、クロード様から相手はフェンリルかもしれないので十分に注意するようにと」
「はぁ・・・。クロード様も心配性だな。しかし、相手の情報が手に入ったのはありがたい。十分注意すると伝えてくれ」
「はっ。それでは自分は失礼します」
護衛に戻るであろう若い騎士団員を見送りバンネル団長以下、討伐隊は気合を入れなおすのだった。
通常であればフェンリルといった危険な魔物の自然発生は考えられない。
十中八九、魔族が関わっているはずだ。
当初から油断はしていなかったが相手は一筋縄ではいかないだろう。
怪我人が出るかもしれないがそれでも引くわけにはいかないバンネル団長達は警戒しつつも近くの森に入っていったのである。
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