第413話
目を覚ましたクロードは暇を持て余していた。
残ったドラゴニア王国の歩兵部隊では監視するのがやっとでジュネシス王国が戻ってくる可能性も否定出来ないため国境から動けずにいたのである。
クロードは何となくアイテムボックスからギターを取り出してチューニングをすると適当に何曲か弾いてみる。
最初は遠巻きに見ていた兵士だったが非番の兵士達が集まり曲に聞き入っていた。
この交流をきっかけにクロードの評価は恐ろしい子供から親しみやすい子供という風に変化していった。
クロードがそんな風に過ごすこと1週間ほどミューヘン卿が愛騎であるグリーンドラゴンと共にやってくる。
「クロード卿。おかげ様を持ちまして王国に蔓延っていった魔物騒動は沈静化に向かっております。この場は手の空いた我が国の者が引き継ぎますので一緒に王宮へ来てはいただけないでしょうか」
「わかりました」
クロードに否はない。
クロードは愛騎であるグリフォンを呼び出し空の人となる。
監視部隊である兵士達は別れを惜しみ手を振ってくれていたのが印象的だった。
「この短期間で我が国の兵士とずいぶん仲良くなったようですね」
「時間はたっぷりありましたからね。交流する機会があってよかったです」
ギターを弾いていただけとは言いづらく無難な言葉で濁しておく。
「詳しくは聞きますまい。一時はどうなることかと思いましたが、クロード卿には改めて感謝いたします」
「やめてくださいよ。僕は自分に出来ることをしただけですから」
「それでもです。救えなかった者もおりますが、クロード卿のおかげで多くの者を助けることが出来ました」
ミューヘン卿はそう言って感謝の言葉を告げてくれるがクロードの中ではジュネシス王国の兵士を殺すことになってしまったことを悔やんでいた。
ドラゴニア王国の民を守るために仕方なかったこととは言えもっと違う選択肢を取れていればと思わざるを得ない。
死者が出たことでドラゴニア王国とジュネシス王国の間の溝は間違いなく深くなったはずだ。
他国のことと言えばそれだけではあるが2国間の交渉はスムーズにはいかないだろう。
「クロード卿。何か気がかりなことでもありますか」
「ジュネシス王国の兵士を大勢殺害しました。このことでドラゴニア王国にご迷惑をおかけするのではないかと」
「あぁ・・・。そういうことですか。彼等は侵略者です。戦死する覚悟は当然していたはずですし、我々が対処するべきことでもあります。クロード卿は我が国を救った英雄として堂々とされていればいいのです」
ミューヘン卿はそう言って励ましてくれるのだった。
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