第383話
「おぉ。何やら珍しい料理が並んでおるな」
「こちらは東の大和国で手に入れたお米を調理したものです」
近くにいた使用人に合図して小皿に取り分けさせる。
小皿を受け取り国王陛下であるポセイドスに勧める。
「よろしければご賞味ください。お酒も珍しい物を取り揃えております」
「気を使わせてすまんな」
「私はそちらの肉を頼めるだろうか」
アドルフ王太子は若いだけあって肉に視線が向いたようだ。
あれはグリーンドラゴンの肉をローストしたものだ。
ドリンクを複数乗せたワゴンを押して使用人がやってくる。
「お好きな物をお取りください」
「うむ。色々あるのだな。お勧めを頼めるか」
「それではこちらをどうぞ」
使用人が勧めたのは大吟醸である。
「ほう。それでは早速」
「いかがでしょうか」
「まず香りがよいな。それに甘みもあって飲みやすい」
「気に入られたのならお帰りの際に何本か包ませていただきます」
「それはありがたい」
国王陛下であるポセイドスと王太子のアドルフもパーティーを楽しんでもらえているようで安心するクロードだった。
招待した吟遊詩人が交代して一人の美女がハープを抱えて歌いだす。
その演奏と歌声に違和感を覚えたクロードが注視すると美女はこちらを向いて微笑んでいる。
クロードは曲が終わるのを待って話しかける。
「どうしてここに」
「私はただ招待されて曲を奏でているだけにすぎません」
「目的はなんだ」
「さぁ。なんでしょうね」
目的を話すつもりはないようで次の曲を奏で始めた。
こんなところで暴れられれば被害は計り知れない。
国の重臣も多く参加しているため何か起きれば国が傾くことも考えられる。
結局吟遊詩人の美女は曲を奏で歌うだけで何もしなかった。
パーティーは無事に終わりクロードはぐったりとしていた。
パーティーの間中緊張しっぱなしで心休まることがなかったからである。
吟遊詩人の美女の正体はロキかそれに連なる者だ。
あの場で暴れはじめられれば止められるのはクロードだけだった。
何が目的で潜り込んできたのかは結局わからずこれだけ人間社会にとけこんでいるいることを考えると先が思いやられた。
どこにでも存在する可能性があり一度暴れ始めれば止められる人間は少ない。
その気になればいくらでも国を崩壊に持ち込むことが出来るだろう。
どのように対策をすればよいのか思い悩むクロードだった。
「あれがオーディンの打ってきた駒か。中々に興味深い存在だね」
それだけ言い残し吟遊詩人の美女の姿はゲルマン王国から消えたのであった。
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