第368話

湯霧山に入ってしばらく進むと刀を構えた猿がやってくる。


この猿は武道猿といいかなり器用で武器を使いこなし歩法や武技なども使ってくる厄介な奴らなのだ。


「眼海さんもいっていましたがかなりの強敵です。気を付けてくださいね」


「わかったわ」


エリーゼは細剣を抜き放ち武道猿と対峙する。


エリーゼは滑るような動作で突きを放ちにいくが武道猿は半歩動くことで的確に突きを回避する。


武道猿は突きを放ったことで硬直しているエリーゼに刀を振り下ろしてくる。


それをエリーゼは歩法半月で回避する。


歩法半月は半円を描くように相手の後ろをとる歩法だ。


武道猿の後ろをとったエリーゼは連撃を放ち武道猿に確実にダメージを与える。


武道猿は一度距離をとるようにエリーゼから離れ刀を上段に構える。


両者共に次の相手の動作を警戒して睨みあいとなり時間が過ぎてゆく。


焦れたのか先に動いたのは武道猿であった。


上段から一直線に刀を振り下ろし真空の刃がエリーゼを襲う。


エリーゼは真空の刃をかわし距離を詰めるがそれを読んでいたかのように武道猿は刀を下から上に斬り上げていた。


エリーゼは間一髪のところでそれをかわしたが大きな隙となり武道猿はそれを見逃すことなく狂刃がエリーゼを襲う。


クロードは怪我を負ったエリーゼに回復魔法をかけるが武道猿は抗議するように奇声をあげていた。


武道猿からすれば1対1の決闘をしていたのに第三者が介入してきたのでご立腹のようだ。


しかし、奇声を上げたのがよくなかった。


その隙を突きエリーゼの会心の一撃が武道猿に当たり武道猿は霧となって消えていった。


「エリーゼ。どうでしたか」


「思っていた以上に強敵ね。でもこれなら確かに短期間で強くなれそうだわ」


やる気は十分なようでクロードは安心する。


王国に戻らなければならない期間はもう1か月を切っているがここで修業をすればエリーゼは間違いなく強くなれるだろう。


武道猿達は1層ならなぜか1対1の対決にこだわる習性があるため安心して修行に励むことが出来る。


その後もエリーゼは1対1の決闘を繰り返して着実に実力を伸ばしていった。




日が沈みはじめた頃、2層に繋がる安全地帯にたどり着いていた。


安全地帯には温泉が湧いておりエリーゼに入浴を勧める。


ここは比較的人が利用することもあり温泉は男女で別れており安心して入浴を楽しむことが出来る。


クロードはエリーゼが入浴をしている間に食事の準備をすませてしまう。


お米を鍋に入れてアースドラゴンの肉と野菜を加えてじっくりと煮込む。


最後に卵を加えて塩と胡椒に醤油で味を調えれば雑炊の出来上がりだ。


入浴を終えたエリーゼは雑炊を美味しそうに食べて満足したのか眠りに落ちていった。

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