第363話

「痛い。痛いぞ。こんな痛みは何百年ぶりか」


クロードの斬撃を食らった牛鬼は傷つきながらも健在だった。


牛鬼は筋肉が盛り上がりみるみる顔が変化して目がぎょろりと動く。


「それが本性ということですか」


「お前なら手加減などせずに楽しめそうだ。頼むからすぐ終わってくれるなよ」


そういって一足飛びにクロードに飛びかかってくる。


クロードと牛鬼は刀と刀を交差させ激しい火花が飛び散らさせる。


その後も二人は激しいつばぜり合いに斬りあいを繰り広げ一歩も引かない戦いを見せていた。


「小僧。やるではないか」


「片手間と言ったのは謝罪しましょう。ですが僕の相手をするには力不足ですね」


「言ってくれるではないか」


牛鬼の体には無数の細かい傷が刻まれていた。


それに対してクロードは無傷である。


「それではそろそろ本気でいかせてもらいますよ」


「ぬかせ」


クロードは周囲への影響を気にして力を抜いていたがその制限をほんの少しだけ解除する。


それだけで拮抗していた戦いの流れはクロードに傾いた。


「なるほど。人質が気になって本気を出せていないわけか。おい。その小娘を連れて奥に引っ込んでいろ」


「やれやれ。人使いが荒いですね。私としてはこの小娘がどうなろうと関係ないのですが、貴方の不興を買いたくはありませんから従いましょう」


魔人はエリーゼを連れて奥へと歩いていく。


「これで遠慮なく遣り合えるだろう」


「わかりませんね。貴方のような方が何で魔人なんかと手を組んでいるのか」


「こっちにはこっちの事情ってもんがあるのさ。いくぞ」


牛鬼はクロードに斬られながらも刀を手放すことはなく何度も何度も立ち向かってきた。


「これ以上やれば神と言えどタダでは済みませんよ」


「なんだ。神だってバレていたのか」


「龍脈の力に触れたおかげでしょうか。なんとなくわかるようになったようです」


「俺は人に試練を与えるのも役目の一つでな。嬢ちゃんのことを思うなら俺を斬って見せろ」


クロードは刀を鞘に納め構えをとる。


歩法俊雷で間合いに入ると神閃を発動させて牛鬼の体を真っ二つにしてみせる。


「見事だ。これでお前さんは神殺しの称号を得たことになる。ロキの野郎と遣り合うのに役立つはずだ」


「何故、体を張ってまでこんなことを」


「いったろ。人を導くのが神としての役割だ。そんな悲しそうな顔をするな。少しばかり眠りにつくだけで存在が消滅するわけじゃねぇ」


「ありがとうございました」


牛鬼の体は光に包まれて消えていった。


後には宝玉が残されそれを押し抱くのだった。

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