第302話

クロードはようやっと注文のあった花火の魔道具の生産が終わり時間を持て余していた。


ブリュンヒルトはどうしているのか気になっていたのだがどうやらクロードがオーナーを務める喫茶店兼バーで住み込みで働いているようだ。


休みの日に邪神ロキ討伐の交渉にきているが今のところそれを受け入れる気はない。


魔人達の暗躍でどれほどの被害が出ているのかは国王陛下であるポセイドスや宰相のリッチマンが調べてくれているのでその報告待ちだ。


ここ最近体を動かしていないなと思い王宮騎士団の詰め所に行くことにした。


詰め所にいくと何故か団長室に通された。


「クロード卿か。ライヒルト領の一件以来だな」


「フォーネスト団長。お疲れ様です」


「今日はどうしたんだ」


「最近体を動かしていないので体を動かそうかと」


「そういうことか。歓迎するよ」


「何か悩み事ですか」


「ライヒルト領が増えたことで防衛部隊に穴が出来ていてな。その穴埋めで大忙しなのさ」


「機動力があるからこそ頼られているわけですね」


「宮仕えの辛い所ではあるが民のことを考えれば最善を尽くしたい」


「一領主の身としては何もして差し上げられないのが辛い所です」


「装備をまわして貰っているしいざとなったら竜騎士団が控えていることを考えれば大いに助けられているよ」


「そういって頂けると救われた思いです」


「私の愚痴を聞いていても仕方ないだろう。もう行くといい」


「はい。失礼しますね」




練兵場についたクロードは軽く素振りをして体の具合を確かめてから模擬戦をしている区画に向かう。


クロードの強さは知れ渡っているのか対戦相手は油断せずに相手をしてくれる。


クロードは歩法や武技に頼ることなく技量のみで相手を圧倒する。


希望者を全員相手にしていたらいつの間にか夕方となっていた。


「本日はありがとうございました」


「いえ。こちらこそいい経験になりました」


王宮騎士団の団員達は負けたというのにいい笑顔で見送ってくれた。


クロードとしても団員達の工夫は大変参考になり大いに満足したのである。




街に出たついでに適当に食事をすませてしまおうとお店に入る。


お店は仕事終わりの町民達で賑わっており満席に近かったが空いている席をなんとか確保する。


メニューは1つだけで選択の余地はなかったがこれだけ繁盛しているなら期待してもいいだろうと注文をすませる。


出てきたのは野菜と肉を煮込んだスープに硬いパンだった。


スープを口にしてみればピリッとした辛さを感じる。


だが辛さの中にしっかり旨味がありこれはこれで美味しかった。


料理を食べ終わったクロードは支払いをすませて寮への帰路についたのである。

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