第270話
クロードは教員や騎士団の人達にお店の場所を教えて利用してもらえるように働きかける。
社交の場でも寄ってくる令嬢達にお店の宣伝を行う。
「実は新しく喫茶店兼バーのお店を出したんですよ」
「そうなのですか。興味があります」
「今までにない新しい飲み物を提供しています。お店は中央通りに出ていますので是非行ってみてください」
「クロード様がエスコートしてくださるのかしら」
「お時間が合えば良いのですが僕は学生の身ですので中々」
「それは残念です。お父様を説得して行ってみますわ」
新しい物好きな令嬢達は親を説得して利用してくれる人も出てきてお客様に困るという事態はどうにか避けることが出来た。
喫茶店の繁盛とは逆にイライラを募らせている一人の男がいた。
喫茶店の評判を落とし困ったところで助け舟を出す予定だったというのにこれでは計画倒れである。
「儂の工作は完璧だったはずだ繁盛の原因は何なんだ」
「何でも今までにない飲み物を提供しているとか」
「新しい飲み物だと。詳しく話を聞かせろ」
「そういうと思って店で出されているワインを入手してございます」
使用人がワインの蓋を開けるとポンと音をたてる。
グラスに注がれたワインは泡だっている。
「なんだ。この泡は」
「スパークリングワインというそうです」
はじめて見る現象を興味深そうに見る男の前にグラスが差し出される。
男は意を決してグラスの中の液体を口に含む。
「パチパチして不思議な感触だ。これは癖になる。よし決めたぞ。店を買収するんだ」
「それなのですがどうも店をとある貴族が買い取ったそうで難しいかと」
「貴族が買い取っただと・・・。儂が手を出しているのは周知の事実だったはずだ」
「詳しく調査をなさいますか」
「無論だ。儂に喧嘩を売ればどうなるか思い知らせてやるぞ」
男は出かける準備をはじめる。
「どちらにお出かけですか」
「儂が店に行けば何かしらの反応を見せるだろう。儂自ら敵情視察というものだ」
「すぐに馬車を手配いたします」
男は豪華に装飾のなされた馬車で店に乗り付ける。
ここ数日多くの貴族が利用していることもあり目立った様子はない。
店内に入ると大勢の人がおり話通り繁盛しているようだ。
「いらっしゃいませ」
目をつけていたウェイトレスは忙しそうに動き回っている。
「ふん。相変わらずしけた店だ」
男は乱暴に席に座り接客を待つ。
周囲からは白けた目で見られているが男が気にした様子はない。
ウェイトレスが普通に接客をしてきたことに内心イライラする。
儂のことを覚えていないのかそれとも平静を装っているだけなのか判断に困るのだった。
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