第268話
炭酸飲料を普及させるために動き出したクロードではあるがワインを飲むわけにはいかないのでスパークリングワインにした状態で教員や騎士団の詰め所をまわり試飲用のボトルを提供して評判を聞くことにした。
手隙になった時間で魔道具の量産も怠らない。
スパークリングワインは合わない人もいたようだが概ね評判はよくもっとないのかと聞かれる始末だった。
「近いうちに売りに出しますから」
と言って言葉を濁しその場は切り抜けた。
クロードは炭酸飲料とコーヒーを提供するお店を直接経営しようと思い付き不動産屋を訪れていた。
「ここは子供がくるような場所じゃないんだよ」
受付の人はクロードを追い返そうとしてくるがクロードは貴族証を提示しつつにっこり微笑む。
受付の人はそれが何かわかっていない様子であったが奥にいた人が気が付いて慌ててやってくる。
「部下が失礼しました。どうぞこちらへお越しください」
クロードは応接室に通され丁寧な歓待を受けていた。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
「実は飲食店を出そうかと考えていましていい立地はないでしょうか」
「そういうことでしたらいい立地がありますよ」
詳しく聞けばよくぞそんな土地が空いていたものだと思わせるような立地だった。
「実際にお店の場所をみてみたいのですが」
「それはちょっと・・・」
「何か問題があるのですか」
「いえ。そういうわけでは」
不動産屋と共に目的の店を見に行くと営業中だった。
「お店が入っているように見えるんですがこれはどういうことですか」
「立地はいいのですが見ての通りお客様がはいっていないでしょう。ここの店は家賃を滞納してるんですよ」
「家賃の滞納ですか。普通なら追い出すところですが何故経営をしているんですか」
「人が入らなければ店は痛むものです。それにこれだけの立地となると尻込みする業者も多く次の店が決まるまでという条件で貸し出しているんです」
「とりあえずお店に入りましょうか」
「そうですね」
お店の中に入るとすぐにウェイトレスが対応してくれる。
店主だろうか不動産屋を見た瞬間苦虫を噛み潰したような顔をしたが構わずカウンター席に腰掛ける。
「紅茶を二人分お願いします」
「かしこまりました」
「不動産屋さん。本日はどういったご用件で」
「このお店を欲しいとおっしゃる方が現れましてその案内です」
「そうですか」
話しながらもマスターは紅茶を手際よく入れて給仕してくれる。
クロードは紅茶を飲んでみる。
「うん。普通に美味しいですね。この腕前でこの立地なのに何でお客さんが入らないんでしょうか」
クロードの疑問は膨らんでいくばかりだった。
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