第262話
軍派閥のパーティーを皮切りに多くのパーティーへと招待されて参加する機会が増えていた。
エリーゼが参加しているときはいいのだがそうでないパーティーでは多くの令嬢に囲まれて反応に困ってしまう。
下手な返事は後々自分の首を絞めることになりそうで当り障りのない会話を心掛ける。
そして何が一番困るかといえばパーティーへ参加した翌日決まってエリーゼの機嫌が悪いのである。
「多くのご令嬢に囲まれてさぞ楽しかったでしょうね」
「どう反応を返したらいいのか困っているんだけど」
「クロードはいい男だもの。何を答えたってご令嬢達は喜ぶわ」
「そうかもしれないけれど立場を考えれば気安くなんてできないよ」
辺境伯家の当主として迂闊な約束をすれば大事である。
それを考えれば心休まる瞬間などなかった。
「社交の場はご令嬢達にすれば戦場よ。条件のいい男性をいかにして射止めるか。それが嫌ならパーティーへ参加しなければいいのに」
「理由もなく参加しないのは非礼になるしファールハイト兄様からも積極的に参加して地盤を固めろって手紙がきてたんだよ」
「それならご令嬢の相手でなく当主達を相手にしなさいよ」
「僕もできればそうしたいけど勝手がわからないし気付けばご令嬢達に囲まれているし困っているんだけどね」
「はぁ・・・。それは当主達に弄ばれているのよ。ご令嬢達が何か約束を取り付ければそれでよしだし不利な話になっても政治のわからない娘のいったことだからとなかったことにする気満々なのよ」
「僕はどうしたらいいのかな」
「わかったわ。面倒だけど私も出来る限りパーティーへ参加して牽制してあげるわ」
「エリーゼ。ありがとう」
「私がクロードにしてあげられることなんて少ないしね。でもこれは貸しよ」
「わかった。何で返せばいいかな」
「また街への買い物を付き合ってちょうだい」
「エリーゼがそれでいいならいくらでも付き合うけど」
「約束したからね」
他のご令嬢達と違って付き合いも長いしエリーゼと一緒にいるのは落ち着くので大助かりである。
一緒にいて困らせるような言動をとったことも一度もなくエリーゼを信頼していた。
一方でクロードに令嬢を押し付けて利益を得んとしていた貴族達はどうしたらクロードから利益を得るかで悩んでいた。
「我々自身が話をして墓穴を掘るのは避けたいところだが令嬢達では力不足なのも否めない。どうしたらガードの硬いクロード卿から利益を得られるのか」
「こうして話をしていても仕方ない。パーティーへは参加してくれるのだ。数を重ねればいずれはガードが緩むだろう」
ニーパス領と鉱山都市グローリアは繁栄している。
そのおこぼれを狙って画策していたのである。
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