第244話

国王陛下であるポセイドスから冷蔵庫の依頼を受けクロードは使用人の案内で城の料理長のもとへと向かった。


「失礼します。料理長。クロード卿が冷蔵庫の製造を行ってくれるとのことです」


「それは本当か」


明日の仕込みだろうか忙しそうに作業をしていた一人の男性が近寄ってくる。


「どれぐらいの大きさでどれだけ数がいるのかお聞きしてもよいですか」


「大きさはそこの壁に収まる程度で5個ほどお願いできますか」


「わかりました。出来るだけ早くお届けできるようにしますね」




王宮を辞して自分の寮に戻ったクロードは早速冷蔵庫作りをはじめる。


錬金術を利用して箱を作り細かい魔法陣を書き込んでいく。


授業に参加しながらなので数日かかったが作ったことのある品であるため作業は順調に進み完成した。


クロードは早速完成した冷蔵庫をアイテムボックスにしまい王宮を訪れる。


使用人の後に続き厨房を訪れると料理長が歓迎してくれる。


「依頼の品が完成したのでお届けに来ましたよ」


「こんなに早く収めてくれるとは思っていませんでした。ありがとうございます」


クロードは指定された場所に冷蔵庫を出していく。


「これが冷蔵庫ですか。これで食材を冷やし続ける労力が減ります」


城で働く人の数は多く必要な食材を生活魔法で冷やし続けていたことを考えれば確かに労力は半端なかっただろう。


「何かあれば気軽に声をかけてください」


「今回は本当にありがとうございました。こちらが取引の明細になります」


クロードは明細を受け取りそれを財務省に提示して代金を受け取って寮へと引き上げた。




クロードは再び通信のための魔道具作りを開始した。


どのようにすれば会話できるのか何かヒントはないかとあらゆる書物に目を通していく。


ヒントは意外な場所に転がっていた。


それはネツァルさんがまとめた転移門に関する研究資料に載っていた。


転移は体全てを移動させるわけだが声だけを転移させればよかったのである。


この発想を元にクロードは通信の魔道具の試作品を作ることに成功する。




クロードはエリーゼの元を訪ねた。


「エリーゼ。ちょっといいかな手伝って欲しいことがあるんだけど」


「何かしら」


「これを持って僕の声が聞こえるか確認して欲しいんだ」


「よくわからないけれどわかったわ」


クロードはエリーゼに協力してもらいながら通信可能な距離を測定する。


「エリーゼ。聞こえるかな」


「すごい。本当にクロードの声が聞こえるわ」


クロードは少しずつ距離を離しどこまでが通話可能圏内なのかを調べるのだった。


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