第227話

私の名前はブリュンヒルト。


偉大なる主神オーディン様に使える戦乙女のヴァルキリーです。


今はオーディン様の命により人間であるクロードという者を探して人間界を彷徨っています。


「もう。クロードとかいう奴どこにいるのよ」


問題があるとしたらクロードと言う人物がどこにいるかわからないこと。


私は決して迷子になんてなっていません。


クロードとかいう奴のほうから私のもとを訪れるべきなのです。


それだというのに人間とはわかっていないですね。




「あら。あれは・・・」


どうやら人間の村が襲われているようです。


戦乙女のヴァルキリーとして襲われている人々を放置するわけにはいきません。


支援魔法で全身を強化して襲われている村に急ぎます。


「助太刀します」


私はオーディン様から与えられた槍をアイテムボックスから取り出して戦列に加わります。


村を襲っていたのは猪型の魔物のイーヴルボアでした。


倒せばさぞかし美味しい肉を落とすことでしょう。


決してお腹が空いているわけではないですからね。


私は村人を巻き込まないようにイーヴルボアをサクリサクリと突き殺していきます。


仲間を失ったイーヴルボアは一部は怒り狂い一部は森に逃げだしていきました。


怒り狂ったイーヴルボアなど私の敵ではありません。


華麗な私の槍捌きでお仲間の元へ送り込んであげます。




「助かりました。ありがとうございます」


助けた村人がお礼を言ってくれます。


やはり人を救うのは気持ちのいいことですね。


「いえいえ。当然のことをしただけですから」


「大したことはできませんが村に泊っていってください」


日を見れば夕暮れです。


この申しでは非常にありがたいので受けることにします。


「ありがとうございます。お世話になります。よかったらこのお肉は皆さんで食べましょう」


「よろしいのですか」


「えぇ。一人では食べきれませんし」


村人達にとって肉は貴重品のようで大変喜んでくれました。


この日は村人総出で宴会が開かれて村長さんのお宅にお世話になりました。


ここ最近は野宿をすることが多かったので屋根があり風を遮ることができる場所で寝れるのは嬉しかったです。




翌日。


村人達に惜しまれつつもクロード探しを再開します。


人を助けた後で気分のよかった私ですが街道を進むごとに不機嫌になっていきます。


これも全てクロードが悪いのです。


何の手掛かりもなく一人の人間を探してサポートしなければいけない私の立場も考えてほしいものです。




天界からブリュンヒルトの行動を見ていた女神アリアは溜息をついていました。


「やはり迷子になりましたか。本格的に邪神ロキが動き出すまでに合流してくれるといいのですが」

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