第161話

クロードは連日授業が終わるとエリーゼと女子生徒達に頼まれ体の作り方から勉強と魔法を教えていた。


本日は体力作りの日ということで演習場を皆で走り込んでいた。


体を動かすのが苦手と言っていた子も回数をこなすことに改善されて最低限の体力を身に着けていた。


「まだいけそうですね。もう1周追加で走りましょう」


「クロード君の鬼。悪魔」


体力作りで大切なのはギリギリを見極めて追い込むこと。


文句を言えるうちは大丈夫な証拠である。


「ほらほら。ペースが落ちていますよ」


エリーゼはお姫様であるのに積極的に体を追い込んで頑張っている。




限界まで皆を追い込んだクロードは休憩を指示して水分を配っていた。


そこに上級生達がやってくる。


「頑張っている新入生がいるって聞いたけどクロード達だったのね」


「アイリス姉様」


「皆へばってるじゃない。ちょっと追い込みすぎじゃないかしら」


「ギリギリまで追い込まないと訓練の意味がないじゃないですか」


「せっかく手伝おうと思ってきたのにこの様子ではな」


「一人だけ元気な子がいるけどこの子ってアイリスさんの弟さんなのね」


「自慢の弟よ」


「何もせずに帰るのはちょっとな。いっちょもんでやるか」


「あー・・・。うん。頑張ってね」


「よし。俺と模擬戦だ」


姉様と一緒にやってきた上級生の男子生徒相手に模擬戦をすることになった。


お互いに訓練用の剣を構えて相対する。


「先は譲ってやるから打ち込んで来い」


お言葉に甘えて踏み込んで上段から斬りつける。


「正直な攻撃だな。まだまだ駆け引きは苦手か」


男子生徒は受けたがあまりの威力に後退する。


「おいおい。なんて威力だ」


男子生徒は勢いをつけて突きを放ってくるがそれを最小限の動きで回避する。


「クロード。手を抜いちゃダメよ」


熱戦を繰り広げているように見せかけようとしたけどアイリス姉様に看破されてしまう。


仕方がないので男子生徒が耐えられるよう威力を抑えて連撃を体に叩き込む。


「ちょ・・・。待って・・・」


男子生徒の待っての言葉で攻撃をやめて静止する。


「いや。まいった。これでも剣には自信があったのに先生達より強いんじゃないか」


「クロードは5歳の時点でゴブリンロードを単独で討伐した腕前だもの」


「俺じゃ相手にならないって知っててやらせたのかよ」


「貴方の高い鼻っ柱もこれで折れたでしょ」


「先生達ともまともに打ち合えるようになっていい気になってたのは事実だがこれはあんまりだ」


「先輩。傷を治しますね。ヒール」


「おう。ありがとうな」


男子生徒はこの仕打ちに文句を言うことなくアイリス姉様達と一緒に去っていった。

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