第158話
「父様の言っていたことは事実だったんだな。恥を知れ」
「領主は領民を守るためにもお金を集める努力は必要だよ。余裕があったから国にお金を貸すところのどこが悪いのかな」
「そんなに金が余っているなら困っている領主に手を差し伸べるべきだ」
「そうだ。そうだ」
「一方的に施しをしても問題は何も解決しないしそれこそその貴族のプライドを傷つけることになるんじゃないかな」
「それは持っている者の詭弁だ」
「さっきから聞いていればクロードがお金を持っているのを気に入らないだけじゃない」
気が付けばエリーゼが女子生徒達の輪を抜け出し反論に参加してきた。
「エリーゼ様。国から支援を切られ貧困に困っている貴族がいっぱいいるのですよ」
「それは可哀想だと思うけど対策を立てられなかったその貴族が悪いのよ」
「二人とも落ち着こうか。僕がお金を出すのは簡単なことだよ。でもその資金が尽きたら同じことの繰り返しになる。経営能力のない貴族を見て領民はどう思うのかな」
「領主を見限って移住するかもしれないわね」
「そうだね。そうなるとますますその貴族は収入が減っていよいよどうしようもなくなっちゃうよ」
「この分からず屋め」
ハバロフ君は悔しそうな顔をしながら去っていってしまう。
取り巻きの子達も慌てて後を追っていく。
「エリーゼ。庇ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
「ああは言ったけど困っている貴族達をなんとかしないとね」
「なんとかなるのかしら」
「陛下も対応できない貴族は切り捨てる考えみたいだったけど天領になっても王国の財政を圧迫するだけだからね」
「クロードには何か考えがあるのね」
「領主達が受け入れてくれればだけどね」
「私は帰るけどクロードはどうするの」
「宰相のリッチマンさんに会うために王宮に行ってくるよ」
「わかったわ。また明日ね」
「うん」
学園の馬車を借りて王宮に向かったクロードはすぐに宰相のリッチマンの執務室に案内される。
「失礼します」
「クロード殿よく来られましたな。今日は学園の入学式だったのだろう。何か問題でもありましたか」
「貧困に困っている領主のところに産業を興そうと思っているのですがあいにくと接点がなくどうやってアプローチすればいいのかご相談に来ました」
「どのような産業を興すおつもりですかな」
「基本はやはり農業と畜産です。携行食を作る工場を建てようかと考えています」
「なるほど。距離の関係で今までは売れなかった食料を安定的な値段で買い取ることで領民に還元しようというのですな」
「領民の生活が安定すれば自然と税の収入が増えて領主を支援できるのではないかと考えています」
「なるほど。私が説得をしてみましょう」
「お願いします」
この結果クロードは多くの携行食工場を所有することとなる。
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