第126話

「閣下。敵に動きがありました」


「詳細を報告しろ」


「都市から敵歩兵部隊が出てきました。数は少数とのことです」


「何を考えているかはわからないが敵を叩く好機ということだな。迎撃の準備だ」


「はっ」


命令を受けた部下が走っていく。




シルフィード皇国の兵士が前方に陣取るゲルマン王国の歩兵部隊を攻撃しようと動きだしたころクロードは騎士団を連れて敵右翼へと迫っていた。


時を同じくして反対側の左翼にも王宮第三騎士団が襲いかかる。




「何だこの音は」


「報告。敵の騎兵が右翼に迫っております」


「報告。左翼にも敵騎兵が迫ってきております」


「攻撃を中止して直ちに防御を固めよ」


「ダメです。間に合いません」




完全に攻撃に意識がいっていたシルフィード皇国はゲルマン王国の二つの騎士団の突撃により壊滅的なダメージを受けた。


「餌を用意して敵の意識を集中させて騎兵部隊で蹂躙か。ここまで見事に決まると気持ちがいいな」


「イリウム団長。クロード卿の考え通りに進みましたな」


「残敵掃討に入る。投降した敵兵は歩兵に任せ逃げる敵を追うぞ」




「クロード様。敵は壊滅状態です」


「これ以上無駄な血は見たくありません。抵抗する相手は仕方ないですがなるべく捕虜にしてください」


「了解しました」




「クロード卿。お疲れ様でした」


「イリウム卿もお疲れさまでした」


「ずいぶんと捕虜にしたものだが後が大変だぞ」


「敵である以上討ち取るのは仕方ないことですが血を流しすぎれば今後の統治に影響がでます」


「私は軍人だから敵を討ち取ればよいと思っているが領主ともなれば政治になるわけか」


「敵対したとはいえこれからも隣国として付き合わなければいけませんから」




シルフィード皇国の領主の一人が命令書により兵を派遣したが不審に思い皇宮に確認のために走っていた。


「忙しい中お会いしていただきありがとうございます」


「我らも忙しい早速で悪いが用件を聞こう」


「ゲルマン王国がニーパスで建設中の都市の建築妨害のために国境付近の領主が兵を出しましたがご存じでしょうか」


「確かにニーパスの建築を阻止するように命令は出したが周辺領主への命令権は与えた覚えがない」


「では。指揮官の独断ということでしょうか」


「指揮官の独断ということになるな」


「領主の抱える兵士を動員しては小競り合いどころか本格的なゲルマン王国との戦争になるぞ」


「急いで指揮官を止めるのだ」


「間に合えばよいが」


首脳陣は迅速な決断をしたが策に嵌った指揮官は野戦にて負け捕虜となっていたのである。

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