第86話

湿地帯に足を踏み入れたクロードはあまりの足場の悪さに辟易していた。


「これは思ったより手こずりそうだな」


ゲーム時代は足場の悪さによるデメリットなどなかったというのに現実となった今では影響を受けざるをえない。


対してこちらを見つけたリザードマンの群れは足場の悪さなど関係ないと機敏な動きを見せている。


クロードは接近戦は不利と判断して魔法を中心に戦うことを決める。


使用する魔法は初級風魔法のエアカッターである。


襲ってくるリザードマンの群れを片付けドロップ品を回収する。


単調な作業ではあるが黙々とリザードマン狩りを続ける。




十分な数を狩ったので引き上げようかと考えはじめたころ強大な存在感を示すグリーンドラゴンがこちらに突っ込んでくるところだった。


グリーンドラゴンは碧色の綺麗な鱗に翼をもった立派な竜である。


グリーンドラゴンの突進を転移魔法で短距離移動することで回避する。


武器をクイックで刀に変更して再び、転移魔法を発動する。


方向転換しようとして動きを止めたグリーンドラゴンの喉元まで移動して武技である神閃で一刀のもと首を叩き斬る。


「ふぅ。こんなところでドラゴンに襲われ続けたらかなわないな。早く帰ろう」


グリーンドラゴンの落としたドロップ品を回収して転移魔法で屋敷までいっきに戻る。




屋敷に入ると使用人の一人が出迎えてくれる。


「クロード様。おかえりなさいませ。奥様が帰ってきたら顔をだすようにとのことです」


「母様がですか?わかりました」


クロードはそのまま母様の部屋へと向かう。


「母様。今戻りました」


「おかえりなさい。クロード。今回はずいぶんと家を空けたのね」


「ちょっと他国まで行っていたので。そうだ。母様と姉様達にお土産があるんですよ」


クロードはミースール鉱山で手に入れた宝石をアイテムボックスから次々と取り出す。


「あらあら。宝石がこんなにいっぱい。本当に貰ってしまってもいいのかしら?」


「僕が持っていても使い道がないですから」


上機嫌な母様を前に退室して自分の部屋に戻る。


「ふぅ。気をそらすことには成功したけどあんまり心配をかけないようにしないとな」


着替えを済ませたクロードは父様の書斎を訪れる。


「父様。失礼します」


「お帰りクロード。あんまり母さんに心配をかけないようにな」


「気をつけます」


「それでわざわざやってきたということは何かあるのかな」


「フラン連合王国でスケルトンワーカーキングを倒したのでその魔石の処理をお任せできないかと思いまして」


アイテムボックスからスケルトンワーカーキングの魔石を取り出して父様の前に置くのだった。

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