小4で召喚されて10年僕はようやく縁が切れた

あに

第1話 召喚


「あ、あのお母さん」

「なによ!」

「…給食費を」

「あるわけないでしょ」

「でも」

 叩かれると思って身を竦むと

“バシッ”

「…」

「本当うるさいわね」


 今日も給食費が貰えなかった。


 学校に行くと。

「また食いに来てるぞ?」

「あーあの子ね」

「給食費払わないんだって?」

 言われても食べるものがここしかないから学校に来るしかない。

 僕だって普通に給食費払って食べたいよ。

 もちろん朝も夜もないんだから、昼しか食べれない僕は一番痩せっぽちだ。


 そんな時教室に光が入ってきてクラス中を光で包み込む。

 目を開けるとどこか違う場所にいた。


「ハズレか?まぁいい、鍛えて強くするのに何年か、かかるだろう」

 とメガネのひとが、

「この子達を鍛え上げるのですか?」

 と大きな人が、

「ハッ!子供だからって舐めてかかるんじゃないわよ」

 と女の人が。


「どこだよここ」

「おかあさーん」

「異世界転移だ!やった!」

 などと、泣いたり笑ったりみんなどうしたんだろう?


「まずは鑑定の儀だ、並ばせろ」

 メガネの人が言うと、

「さぁ。みんなこっちに並んでくれ、ほら泣かない、すぐ終わるからね」

 大きな人があやして並べる。

 みんなが並ぶのでぼくも並ぶ。


「おぉ!勇者だ」

 いつも綺麗な服を着て明るい男の子だ。

「こっちは聖女か」

 いつもみんなの中心で優しそうな笑顔の女の子。


 みんなそれぞれ違うことを言われている様だ。

 ぼくの番だ。

「ノージョブ?知らんなぁ」

「知らない職もあるでしょ」

 女の人は怖い。


「全員で31名鑑定の儀が終わりました」

「それでは、まずは食事を与えてから訓練に取り掛かりなさい」

「はっ!」

 

「みんなついておいで、ご飯を食べに行こう」

 みんながついて行くから僕もご飯がもらえるみたいだ。

 硬いパンとスープに牛乳が配られ、硬いパンをスープに浸して食べるらしい。

 みんな残しているけどご飯が食べれるんだよ?美味しいのに食べないの?

「朝ごはん食べたから食べられないよ」

「わたしも」

 あぁ、そうかみんなご飯食べてきてるんだもんね。

「あはは、そういうことか、じゃあ早いけど訓練場に行こう」

 僕は急いで食べるとみんなと一緒に訓練場って場所に向かう。


 そこで、木剣というものを持たされて振るだけの様だ。ただ振れば良いだけじゃなくちゃんと型通りに振らなければいけないらしい。

 

 泣き出す子や、やる気のない子をあやしている大きな人は優しいんだろうな。僕はお父さんを知らないけどあんな人がお父さんだったら良いのに。


 一生懸命振っていたら褒めてくれた。

 頑張れば褒めてくれるんだ。お昼はないみたいで、休憩してからまた夕方まで剣を振る。そしてご飯の時間が来たらご飯が食べられる。天国ってこんなところかもしれない。


 読み書き算数の授業があったがみんなできる為、訓練の時間が増えた。

 でも頑張れば褒めてくれるし新しい型も教えてもらえるのでとても楽しい。



 5年の歳月が過ぎた。


 僕はこの5年で身長も伸び体もがっしりしてきていたが、スキルというものが発現しなかったのだ。そしてメガネをかけた宰相に呼ばれる。

「お前はどれだけ金がかかってると思ってるんだ?お前の様なやつはいらん」

「すぐに摘み出しなさい」

 女の人は女王様だ。

「これが荷物だ、防具と剣はやるからそれを持って出て行きなさい」

 大きな人は騎士団長。

「お願いします。なんでもやるので」

「悪いことは言わない、出て行くんだ」

 騎士団長に肩を持たれて外に向かう。

 出る時に袋を持たされた。

「少しだがお金が入ってる、死ぬんじゃないぞ」

「ありがとうございました」


 階段付近にくると女の子が近付いてきて、

「死ぬんじわゃないわよ、約束」

 と言って帰って行った。

 忍者の女の子だった。


 僕と違って優しくて強い。

 僕はなんで弱いんだろう。


 城下町で仕事を探していると、冒険者ギルドというところに行けと言われた。

 ギルドに行くと受付のお姉さんの指示に従って冒険者登録をする。

 最後にまたあの水晶に触ってノージョブと記名されるとカードが出来たようだ。

Fランクからの仕事は街の中だけらしいのでそれを頑張ってやり、少ない賃金でもやっていけるようになってきた。


 約一ヶ月の街の清掃やドブさらいで街の人にも顔を覚えてもらった。

「FランクからEランクに上がったわよ。これで街の外に出て魔物退治や薬草取りが出来るわね」

「はい」

 正直ギリギリの生活だった。寝床も床の1番安い宿で、荷物を取られないように抱えて眠る。朝はパンを一つ朝食べて夜にも一つパンを食べる。堅パンと呼ばれるほんとうはスープなどに浸して食べるパンだ。


 これでも城から出る時にもらったお金はほとんどなくなってしまった。

 ギルド二階の図書室で薬草を覚えて、街の外に出て行く。

 教えてもらった通りに葉っぱだけを取って袋に入れるのを繰り返していたらウサギが現れた。


 魔物だ。キラーラビットと言われるツノの生えたうさぎ型の魔物。


 僕には勝てない。でも生きるんだ!約束したからね!剣を抜くと構える。

 キラーラビットが僕めがけて突進して来たが僕はそれを避ける時に剣を当てることに成功した。

 片目が塞がれたようでも戦う気だ。もう一度突進してくるが早さがなくなっているので僕は初めてキラーラビットを倒した。

「はぁ、はぁ、はぁ、」

 体が熱くなり多分これがレベルが上がると言う事だろう。初めての感覚に驚きつつもドロップ品にウサギのツノと肉があった。

 売っても二束三文なので肉は食べることにする。

 焚き火で焼いて食べると美味しさで涙が出て来た。肉なんて何ヶ月ぶりだろうか。

 腹が久しぶりに満たされたのでツノと薬草を持ってギルドに行くとお姉さんに笑顔で、

「キラーラビットの討伐おめでとう」

「おう坊主!やったじゃねーか!」

「今日は俺が奢ってやるからこっちに来い!」

「はい!」

 換金してそのおじさんのところへ行く。

「良かったな!初心者キラーキラーラビットに倒されずに帰ってきたら、そいつに奢ってやるのが決まりだ!その分自分がラッキーにあやかるためさ!」

「そうなんですね!」

「なんでも頼め!」

「えーと。じゃあキラーラビットのステーキをお願いします」

「へへ、優しいな!俺もそんなに手持ちを持ってないんだ!だが男には見栄を張る時が必ずくるからな!」

「偉そうに言うなよ!」

「そーだぞ!」

 他の冒険者さんもとてもいい人だ。

「ルーキー?死ぬのだけはやめろよ?」

「はい!」

 ルーキーで食えなくて死ぬ人もいる。でも僕は何がなんでも生きるんだ!


 あの子とした約束のその日まで、

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