第10話 小6に教える性教育

 静ちゃんの家に行き、彼女の妹の紗香さやかちゃんに会う俺と光。紗香ちゃんは活発かつ元気な印象で、そばにいる俺達も明るくなる感じだ。


静ちゃんと紗香ちゃんの共同部屋に入って少し経った時、紗香ちゃんが俺に質問があると言ってきた。何を訊く気なんだろう…?



 「って、どこまで動かせるの? 象の鼻ぐらいイケる?」


紗香ちゃんが指差す先は…、俺の股間だ。つまりのことか。


「これは大して動かせないんだ」


「なんで? 自分の体についてる物なのに?」


確かに紗香ちゃんの言う通りだな。当の本人である俺がよくわかってないのに、彼女に説明できる訳がない。


「…動かす必要がないんだよ。だからドンと構えてるんだ」

今はこれで精一杯だぞ。


「でもそこにボールが当たったら、超痛いんじゃないの? 男子がヤバそうな顔してるの観たことあるよ」


「俺は経験したことないけど、ここはデリケートだから当たれば本当に痛いと思う」


「だったら、ドンと構えてちゃダメじゃん! ボールから逃げないと!」


説明するどころか押されてる俺。小6だろうと、気になるところはとことん追求するようだ。小学生恐るべし。


とはいえ、このまま引き下がる訳にはいかない。どうやって納得してもらおう?


「…痛い経験が、強い男にするんだよ」


「? 全然わかんない」


紗香ちゃんゴメン。これ以上の説明は俺には無理だ。



 「自由に動かせないならさぁ、好きなタイミングで大きくすることはできるんだよね?」


まだの事を訊くのか、紗香ちゃんは…。


「いや、それも無理だよ」


「嘘付いちゃダメだって! だってこの間、給食食べ終わってすぐ机に伏せて寝た男子がいたんだよ」


「そうなんだ」


「でね、その男子は5時間目になっても起きなかったの。だから先生が起こした後に『眠気覚ましに前に出て、この問題の答えを書きなさい』って言ったんだ~」


というのは、黒板のことか。


「だけどあいつは『わかりません』としか言わないし、席を立とうとすらしないんだよ。その問題、超簡単だったのに…」


寝てた男子が席を立って前に行きたくない理由か。なんとなくわかったぞ。


「何故か先生はすぐ諦めたんだけど『足でも怪我したのかな~?』と思ってあいつをジロジロ見たら、んだよ」


俺の思った通りだ。そんな状態なら席を立つことはもちろん、前に出るのも嫌がるだろう。


「あれってわざと大きくしたんじゃないの? 言い訳するためにさ~」


「その前に良いかな? さっき言ってた先生って男? 女?」


「男だけど…?」


だから先生はすぐ諦めたのか。男同士だからわかるポイントだからな。


「その子は大きくしたかった訳じゃないよ。勝手にそうなったんだ」


「勝手にそうなるのって朝だけでしょ? 」


「有名なのが“朝”なのであって、他の時間の寝起きでも大きくなることはあるよ」


「へぇ~。って不思議だね~」

俺のを見つめる紗香ちゃん。


「そうだよね~」

光も便乗して凝視する。


…静ちゃんも興味ありげな顔をしているな。観たいけど、恥ずかしさや俺を気遣うあまりできない感じだ。



 「紗香ちゃん、他に訊きたいことはあるかな?」

答えられる自信は皆無だが…。


「今は良いや。よくわからないことがわかったよ」


「説明下手でゴメンね…」

年上の面目丸つぶれだ。


「お兄ちゃん、ドンマイ♪」


光が慰めてくれるのが本当に嬉しい。


「そうですよ照さん。わたしだって自分の体を説明できるとは思えません。だから気にしないで下さい」


「ありがとう静ちゃん」


2人とも良い子だからこそ、百合に相応しい。今後の関係が気になるところだ。


「やっぱりさ~。直接観て触ったほうがわかると思うんだよね~」

とんでもない発言をする紗香ちゃん。


これに対し、俺はどう答えるべきだろうか?

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