第17話 魔物討伐6

「ありがとう。かなり楽になったわ」




シエラに魔力を分け与えた後、俺は探知魔法を発動する。




「これは・・・」




少しだけ嫌な予感がする。


探知魔法に掛かったのは明らかに普通の魔物が持つ魔力じゃない。


こんな場所に居るはずがない魔族のものだ。


だが幸いにも今俺たちがいる西側ではなく、ベテランの兵士が担当している東側に魔族がいる。




「そろそろ3時間立っただろうし仮拠点に戻るか。ゴーレムが出てきたことを早めにガビルさんに伝えた方がいいだろうし。」




「そうだな、俺たちもほとんど魔力が残っていない。またゴーレムが来たら逃げるのも難しいだろう。」




全員の意見が一致したことにより仮拠点に帰ることにした。




俺も早く行動しないとな。


手遅れになる前に。






「ゴーレムが出ただと!!嘘をつくな!!」




仮拠点に到着し、早速マルクが事の経緯を説明するとガビルは顔を真っ赤にして怒っている。




「嘘ではありません。本当のことです。」




「じゃあ、そのゴーレムは今何処にいる。」




「ここにいる4人で協力して討伐しました。」




「お前らがか、笑わせるな。ここにいる兵士ですら10人がかりでやっと倒せるレベルの魔物だぞ。それを、学生のお前らがしかも4人で。」




これは、何を言っても信じてくれそうにないな。




「では、報告は以上になりますので我々は休みを取らせていただきます。」




マルクも諦めたのか報告を無理やり終わらせた。




「そうだ、お前らが虚偽の報告をしたことをしっかり隊長に伝えておくから覚悟しとけよ。」




そう言い残しガビルはテントの中に戻った。




「明日に備えて今日は早めに寝るか」




俺がそう提案すると3人が賛成してくれて各々テントに向かった。




「シエラ、少し時間貰ってもいいか」




「いいけど、どうしたの?」




「あまり聞かれたくない話だから少しついてきてくれ。」




俺はシエラを森の少し奥側に連れてきた。


もちろん探知魔法でこの近くに魔物がいないのは確認済みだ。




「それで話って」




「シエラは魔族のことをどのくらい知っているんだ?」




「そうね。普通の魔物とは違って知性があって会話ができる。あと、とてつもなく強い事くらいかしら。確か1体で国一つ滅ぼせるくらいに」




シエラは自分が持っている魔族の知識を話してくれた。




「そうだ。じゃあ、本題なんだが落ち着いて聞いてくれ」




シエラは何も言わず首を縦に振った。




「その魔族が今この森の東側に出現している」




「え、どういう事。魔族はここ数十年現われていないはずよ」




確かに魔族はここ数十年間現れていない。


絶滅したという噂ができるほど。




「ここから先の話は一般には公開されていない情報だから他言無用で頼む。」




一応口止めだけはしておく。


この情報が公開されると色々と不都合が生じるからな。




「数十年魔族が現れなかった理由は、世界最強の剣士が一人で魔王城に攻め入ったからだ。おそらく危機を感じた魔王や魔王の幹部らが何らかの方法で魔族を招集したのだろう。」




「なるほど、通りで魔族が数十年間現れなかったわけね。ちょっと待ってじゃあ、今魔族がこの森にいるってことは世界最強の剣士は死んだってこと。私もあまり詳しい分けではないけど世界最強の剣士ってあなたと同じくらい強いって聞いたことがあるわ」




「待て、俺はあいつ(世界最強の剣士)よりも数段強いぞ。多分。あと、これは俺の憶測だがあいつ(世界最強の剣士)は死んでいないはずだ。俺ほどでは無いがあいつが死ぬ姿が想像できない。」




「じゃあ、なんで今この森に魔族がいるのよ。」




「分からん」




本当に今魔族がこの森にいる理由が分からない。


まさか、本当にあいつは死んだのか。




いや、ないな。


俺はそう結論付けてとりあえず魔族がこの森にいる理由を考えないことにした。




「ここからが本題なんだが、今から俺はこの森にいる魔族を倒しに行こうと思う。それにシエラも付いてきてほしい。」




「悔しいけど魔族との戦闘に私が居ても足手まといにしかならないわ。だから遠慮しておく」




シエラは何を勘違いしているのか勝手に落ち込んでいる。




「シエラ、勘違いしているとこ悪が、戦力が欲しくて誘っているわけじゃないぞ。ただお前に本物の魔法を見せてやろうと思っただけだ。俺はそれがお前の成長に繋がると思っている。それに、こんな機会滅多にないしな」




俺は思っていたことをシエラに話す。


実際、魔法学院の教師の魔法を見るより、俺や魔族の魔法を見た方が勉強になると思う。




「そういう事ならついて行くわ。もちろん守ってくれるのよね」




「愚門だな。傷一つ付けさせるつもりはない。」




「じゃあ、行くか。俺から離れるなよ」




そういって俺はシエラに手を差し伸べた。




「分かったわ。あなたも私を死んでも守りなさいよ」




シエラも俺の意図が伝わったのか俺の手に振れた。


そうして俺は転移魔法を発動した。


転移先はもちろん魔族の目の前だ。


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