第6話 絶望の発覚

 ギルバート・ノノが習得している今は亡き古代魔術は、転換。

 そこから制限を付け加え、使用範囲を限定することにより、ノーリスクでの使用を可能にした。

「俺と一晩寝ること。それか俺の体液を対象に取り込ませることが発動条件。転換は武器か防具に限定しているから他の物には転換できないし、もちろん元に戻すこともできない」

 パリスを組み伏せたまま、ギルバートは続けた。

「転換した瞬間に対象の意識は無くなるからしゃべる武器や防具は無い。痛みのない死はとても魅力的じゃない?」

「黙れ外道! それはお前の一方的な思想だ!」

「心外だなぁ、けっこう痛みのない死は人気があるんだぜ? 心に深い傷を負った奴には特に」

 パリスの価値観を嘲笑うギルバートに、一般的な思考は通じない。パリスは苦虫を噛んだように顔を歪ませた。


 もう王国を出発して長く経つ。魔王討伐に加えられる仲間も、資金すら潤沢に集めることができていない。

 今更ギルバート無くして、パリス一人だけで旅を続けるなどできない。


 それを痛感しているのはパリスの方。ギルバートに腕力ですら勝てない。勇者と武器商人の立場の筈なのに、今の状態はどうだ。

 何も言えないパリスに顔を近づけ、ギルバートは耳元で囁いた。

「魔王討伐が最終目的だろう? なら目的を見失ったらダメじゃないか。その道筋で何が起こっても誰も気にしないさ」

 自分よりも細いパリスの両手首を片手で抑え、ギルバートはパリスの鉄製の胸当てに人差し指を当てた。

「女の子にしては頑張った方じゃないか、パリス」

 ギルバートの悪魔のようにつり上がった笑みにパリスは否定することなく、ただ諦めたように口をつぐみ、目を閉じた。 

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