眠ったままの勇者の伯父さんが、甥っ子の俺の店でハーレムを作っている
落花生
第1話母は重度のブラコンだった
死んだ母は、重度のブラコンだった。
母の兄――つまり、俺の伯父は弱き立場の人々を助ける勇者だったらしい。
勇者というのは、国が弱者救済のために作った枠組みに過ぎない。つまり、人を派遣して国民を助けているという国家の政治的なアピールだ。国中を旅して便利に使われる強者と言ってしまえば、勇者という存在を的確に説明できているだろう。
お人よしで善人だった伯父は類まれなる剣の才能を持っていたので、勇者になったらしい。そうして国中を周って人助けをして、唯一の身内である俺の母にせっせと手紙を送っていた。
母は、自分の兄の活躍を幼い俺に話して聞かせた。何百回と手紙を読んだせいもあって、母は伯父の活躍をそらんじる事が出来ていたのだ。
「兄さんは千人の野盗を倒して、金銀財宝を村人に分け与えたの」
「東の洞窟にすむケルべロスというモンスターを退治して、そこの領主様に首を献上したのよ。その首一つで、城の部屋が埋まってしまうほどの大きさだったらしいわ」
「最北の国のお姫様が、兄さんの姿に惚れこんじゃって大変だったらしいわ。あまりにもしつこく求婚されるから、自分と一緒に故郷に帰って妹と一緒に畑を耕してくれるならば結婚しますと言って跳ねのけたんだって」
「あとね、疫病がはやった地域に訪れて、お医者様と一緒になって治療を行ったらしいわ。最後には、兄さんの治癒魔法で病人を治して周ったらしいの。街を三つも救ったんだって」
ただし、母が語る伯父の活躍は――だいぶ盛られていた。
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