第9話 VSホシグイソウ
『オオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!』
星植物は激怒していた。感情と呼ぶべきものがあるのかはわからないが、何度も獲物を取り逃がし、あまつさえ自身の体の一部を潰されたことに怒り狂っているかのように、次々とツルを地面から出していた。
さらには、先程ハクに潰された大口さえも再生させ、襲いかかってくる。だが狙いは―――――――
「ひぃぃぃぃぃいいいいいいい!!??」
「な、なんかスピカばっか狙っとらんかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「大丈夫、全部止めるから」
植物のツルは今だにスピカに狙いを定めていた。ハクはそれらを拳と蹴りで打ち飛ばし、阻止するがそれでもスピカに向かってツルを伸ばす。
「………?(目の前の僕を無視してなんでスピカばっかり………いや、ひょっとしてこの植物……)
ヒョータ、もっと離れて」
「ゼェゼェ………!んわかっとるぅ!!!」
「(そ、そういえば私、さっきからヒョータさんにお、お姫様抱っこを―――――――!?!??)」
スピカを横抱きにして全力で逃げるヒョータ、こんな状況だが自分の今の状態に気づき、顔を赤くするスピカ、そんな二人を逃がすため攻撃を捌くハクと三者三様の状態の中、一人の人物が近づいてきていた。
「はぁ〜い♡また会ったわねヒョータちゃん♡」
「どわ!?ボ、ボンジョノさん!?」
「話は後よ〜私が安全圏まで連れていくからしっかり捕まんなさい。そっちのお嬢ちゃんもね♡」
「はひ!?」
「ど、どういうことや――――「よいしょっとう!!!」どわぁぁぁぁぁぁ!!!???」
いつの間にか近づいて来ていたボンジョノにヒョータ、そしてヒョータに抱えられたままスピカが連れていかれる。ハクはその様子を黙って横目で見るだけにとどめていた。
ボンジョノはそのまま二人を連れて、離れた高台までやってきた。そこにはすでに三姉妹も避難して来ていた。
「おお!!!ママ!!!おかえり!!!」
「ママ、そいつらも助けたの?………いや、まぁ確かに借りはあるけど………」
「なのです。借りは返すものなのです」
「まぁね、ごめんなさいね?あんた達がうちの娘達のを守ってくれたみたいで助かったわ」
「はぁはぁ……いや、それはええんやけど………ボンジョノさんは、ハクと戦っとったんやないんか?」
「あぁ、それもごめんなさいね?力を試してみたくなっちゃって………ま、あの子は途中からそのことに気づいていたようだけど………
それより見て見なさい。あの子、やっぱりとんでもないわね…………!」
そう話すボンジョノの目線につられ、星植物とハクがいる方向を見る。そこには、無茶苦茶に暴れるツルを躱しながら、次々と大口の葉を潰していくハクの姿が見えた。
「ハ、ハク!あんなに強かったんか!こらいけるんとちゃうか!?」
「す、すごいです!」
「な、なんなのあいつ!?無茶苦茶強いじゃない!?」
「うおおおおおおおおお!!!速いなぁ!!!」
「なのです…………星植物が全然追いついてないのです」
「そうね……でも、星植物があの子……ハクちゃんをとらえられないのはそれだけじゃないわ」
「どういこと?ママ?」
「星植物にはハクちゃんの位置がわからないのよ。あの星植物……ホシグイソウには視覚も嗅覚もない、植物なんだから当たり前だけどね」
「んん???でもアタシたちのこと追いかけてきたぞ!!!」
「別の方法でナノ達の位置を把握してる……のです?」
「あ!えっと………せ、星力探知……ですよね?」
「せいりょくたんち?ってなんや?スピカ」
「あら?あなたは知ってたのね?スピカちゃん♡
……ホシグイソウは他の生き物から星力を吸い取って生きてるの。だから星力をもっている存在を見つけるための能力がある。それが星力探知、自身の探知範囲に入った星力の位置を把握することができる能力よ」
「よくわからんな!!!」
「ニノは黙ってなさい!……要は、近くの星力に反応して攻撃してるってこと?でも、それならあの白髪の位置がわかんないなんてこと、ないんじゃないの?」
「なのです。星力をもってない人なんていないのです」
「!そうか!(俺とハクにはそもそも星力があらへん!せやからあの植物は正確な位置が分からず、さっき逃げとる時はスピカだけを狙って来とったんや!)」
「……心当たりがあるようねヒョータちゃん?」
「うっ!いや、それは……」
「大丈夫よ。その反応で十分だわ……これ以上の詮索はしないわよ、借りもあるし(やっぱりハクちゃんには星力がない……と、考えるべきでしょうね。失ったのか、元々ないのか……どちらにせよ、あの力は星力とは全く別の力というわけね)」
先程のハクとの戦闘で感じた感覚とヒョータの反応を見て、ハクに星力が無いと気づくボンジョノ。三姉妹は理解が及ばず首を傾げているが、スピカは考え込んでいるような表情をしていた。
一方で、ハクは何個目かもわからないほど星植物の大口の葉を潰し、それが再生していくところを見ながら、星植物の弱点に当たりをつけていた。
「(再生で使う星力の供給……その大元はやっぱり地面の中、根っこみたいなのがあるのかな?正確な位置は勘でわかるけど、手当たり次第ツルを振り回してくるから近づきにくい………隙をつくらないと………)」
ハクが倒し方を思案している中、高台でも動きがあった。
「さて………そろそろあたしも加勢しようかしら。あんた達を守っていようかと思ったけど、あいつはハクちゃんを無視できないようだし、一緒に戦った方が早く済みそうだわ」
「あ!ほんならこれ、ハクに渡してくれへんか!?」
「ん?これって………初心者用のショートソードじゃない、あまり役に立たないかもしれないわよ?」
「そんでも頼んます!ハクなら上手く使えると思うんで!」
「ん~~まぁいいわ!渡すだけでいいなら」
「よろしゅう頼んます!」
ヒョータからショートソードを預かると、ボンジョノはすぐにハクの近くまで移動し始めた。
「ハクちゃ〜〜〜〜〜ん!!!」
「!…………ボンジョノさん?」
「ハクちゃんなら気づいてるでしょ〜う?アレが星力に反応してること!
あたしが引き付けてあげるわ!共闘といきましょう!」
「……助かる(星力ないことバレてるな)」
「あとこれ!愛しの相棒ちゃんからよ♡」
「愛しくはない。ありがと」
ボンジョノからショートソードを受け取ったハクは、剣を抜いて刀身を見る。
「一回だけならいけるか」
「あら?倒す算段がついたの?」
「一応、囮よろしく」
「はいはい、しっかり決めなさいよ!」
そう言うとボンジョノはホシグイソウに突っ込んでいく。新たな星力を探知したホシグイソウは、ボンジョノを狙いつつ、近くでいるであろうハクを警戒してツルを振り回す。
それらのツルを躱したり、拳で迎撃したりしつつ逃げ回るボンジョノ、一方でハクは大きく跳躍するとホシグイソウの頭上に到達していた。
「(力の流れを感じる………あそこが星力の供給源だ)」
地面に埋まっている弱点に目星をつけたハクは、右手で剣を持ったまま振りかぶる。剣には赤いオーラのようなモノがまとわりついていき、刀身が赤く染まる。そこでハクは一言つぶやいた。
「〈
そしてそれを投擲した。目にも止まらぬ速さ、赤い閃光が走ったかと思うと……………地面に穴が空いた。
大きな穴ではない。しかし確実に狙いを貫いていたようで――――――――――――――
『オオオオオォォォォ……………………』
ホシグイソウの星力の供給源である器官は機能を失っていた。
星力がないと生きていけないホシグイソウはみるみる萎れていき、いっそ哀れなほど細く枯れ、動かなかった。
「ほんっっっっと!規格外ね………あんた」
「………どうも」
VSホシグイソウ 決着
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