聖者の漆黒

中岡いち

第一部「回起」第1話

 雨。


 ────雨の音が聞こえる。


 嫌いではない。

 外に出るとしたら傘を持たなければならない。荷物が増える。それは面倒。

 遠くに行く必要があれば車。通常の運転より視界は悪くなる。いつもより神経を使う。


 でも、雨の音は好きだった。

 いつの間にか。

 いつからかは覚えていない。

 気持ちが落ち着くような気がした。


 実際、特に夜の研ぎ澄まされた頃の雨が好きだった。

 しかも、例え夜だとしても、雲の向こうからわずかに月の明かりが照らすはず。

 いつもそれを願った。


 しっとりと弱い雨。

 窓を叩きつけるような強い雨。


 何かに似たような、その音と匂いは、神経の張り詰めた私の毎日を少しだけ楽にしてくれたのかもしれない。



      ☆



 しばらく続いた雨がやっと上がっても、その次の日はやはり湿度が酷かった。

 それを強く感じ始める季節。

 梅雨つゆの終わりと夏の始まり。

 さすがに〝御陵院ごりょういん心霊相談所〟でもエアコンが動き始めた。

 元々が古い二階建ての小さなテナントビルの二階。エアコンそのものは古過ぎたので買い替えたが、外の室外機は古いまま。音もうるさい。エアコン自体も買い替えたとはいえ中古。新品を買えるほど収支のバランスは理想的ではなかった。

 唯一の従業員である事務員の久保美由紀くぼみゆきに言わせると、パソコンにも暑さはよろしくないとのこと。蒸し暑いこの国の夏ではエアコンが望ましいということだった。

 古い壁のいかにも事務所用のテナント。広い部屋の他にはトイレと狭い給湯室代わりのスペースだけ。一応壁には小さな換気扇も備え付けられていることから、やはりそのための場所なのだろう。換気扇の下には一口だけのガスコンロ。元々残されていたものをそのまま流用している。小さな冷蔵庫には数日前から麦茶の冷茶用ポットが増えた。他には食べかけのチョコレートだけ。仕事で行った先からのお土産みやげもすでに切らしている。

 広い部屋の中央には小さな丸いカフェテーブルと、それを挟んだ二人がけのソファーが向かい合わせ。相談所の開設時にリサイクルショップで購入した物だ。それでも決してお洒落しゃれなタイプのソファーではない。どちらかというといかにもなビジネス向けの黒い合皮ごうひ

 やはり無機質感は否めない。そのためか、床の敷物から壁の装飾までがゴシックロリータ風の派手な飾り付けで埋め尽くされていた。

 代表者である御陵院ごりょういん西沙せいさの趣味だ。

 その西沙せいさはゴシックロリータの派手な黒い服に身を包んだままソファーの上に寝転がっていた。

 入り口側の事務机からは、ソファーの肘掛けに乗せた西沙せいさの両足しか見えない。その周りにスカートの黒と白のフリルがチラつく。そんな光景に向かって事務机のデスクトップパソコンを前にした美由紀みゆきは正反対に地味なほうだろう。少なくとも西沙せいさにはそう見えた。しかし当の美由紀みゆきに言わせると〝派手ではない〟というだけ。背中まで伸びる長いストレートの黒髪の手入れをおこたったことはない。美由紀みゆきなりにお洒落しゃれにはうるさかった。ゴスロリを着せたい西沙せいさとの押し問答もんどうも一回や二回ではない。美由紀みゆきも興味が無いわけでなかったのは事実。

 そんな美由紀みゆきがキーボードに指を滑らせながら声を掛けた。

「いつ電話が鳴るか分からないのに、そんなダラけた態度で大丈夫?」

 すぐにソファーから返るのはダルそうな西沙せいさの声。

「せっかくテレビに出たのにさあ……」

愚痴ぐちは何度も聞いた」

 美由紀みゆきの応えは淡々たんたんとしたものだ。

 西沙せいさがテレビに出てからすでに半年以上。西沙せいさが霊能力者として関わった事件での記者会見の席。昨年の秋のことだ。西沙せいさとしては事件の解決の集大成としての記者会見というだけでなく、もちろん霊能力者としての顔を売りたいというのもあった。

 もちろん全く反応が無かった訳ではないが、それでも思ったほどの結果ではない。

「ゴスロリじゃダメだったかなあ……目立つと思ったんだけど…………」

「目立ったとしても、そもそもそんなに心霊現象で悩むような人が大勢いたら世もすえでしょ。それだけだよ。幽霊信じてたって霊能力者を信じられない人だっているんだから」

 美由紀みゆき西沙せいさとは高校時代からの友人。唯一ゆいいつの親友同士でもある。唯一ゆいいつ遠慮なく話せる間柄あいだがら。お互いに他はいない。それぞれがそれぞれの中で孤独に生きてきて、高校生という多感な年齢で出会った。きつけられた、ということとは違う。大事な存在であることは分かっていたが、少なくとも美由紀みゆきの中では、西沙せいさはただの友人というだけでは言い表せない存在であることは間違いない。唯一ゆいいつ、人生の中で自分を受け入れてくれたのが西沙せいさだった。

 それは西沙せいさにとっても同じだったが、ただ一つ違うのは、西沙せいさの中には明確に〝自分が美由紀みゆきを守らなければ〟という使命感があったことだろう。そのこと自体は美由紀みゆき自身は何も知らない。

「そうかもしれないけど…………」

 相変わらず気怠けだるそうに返した西沙せいさが続けた。

「世の中には不思議なことっていっぱいあるんだけどなあ…………」

「それはまあ……確かにそうだけど……」

 歯切れ悪く返した美由紀みゆきが口調を戻す。

「答えのないことも多いだろうし、人によって感じ方も違うってことだよ。目に見えないものだし……ただ感じるって言われてもね」

「またそういう懐疑的かいぎてきなこと言って────」

 そう応えた西沙せいさが上半身を起こした。仕事柄か産まれのせいもあるのか、二〇歳にしては気難しい言葉を使うくせのようなところがある。

 黒をベースに細かなフリルの装飾が施されたゴシックロリータに包まれたその見た目は小さい。西沙せいさの身長は一五〇センチを少し越えたくらい。華奢きゃしゃ身体からだ付きに小さな顔のせいで、服装しだいでは小学生に見られることもあった。それを誤魔化すためのゴスロリ衣装でもあったが、思うようにイメージの構築に結び付いてはいないのが現実。

 〝うなじ〟が見えるほどに短く切り揃えられた短いストレートの黒髪がわずかに揺れると、やはり真っ直ぐに揃えられた前髪の下からは大きな目。

 西沙せいさは自分の、その〝目〟が嫌いだった。

 以前は他人と目を合わせることが怖くて仕方のなかった頃がある。しかもそれは自分の〝力〟をコントロール出来るようになった今でもトラウマとして西沙せいさを悩ませていた。

 地元の大きな神社────御陵院ごりょういん神社の三女として産まれた。しかし中学の卒業間近に神社を追い出される。追い出されると聞くと無理矢理な表現だが、少なくとも西沙せいさはそう感じていた。

 真っ直ぐに前を見るその西沙せいさの目に、美由紀みゆきが言葉を向ける。

「それより、カラコンの在庫はまだ大丈夫?」

 その言葉に、西沙せいさの視線が向けられた。

 美由紀みゆきは、その〝ひとみ〟が好きだった。

 西沙せいさの小さな口が開く。

「……んー……まだいいかなぁ…………」

「まだ……必要? やっぱり…………」

 応えた美由紀みゆきの言葉が少しにごった。

 人の目を見ることが出来なかったと同時に、慣れた人は別として、人に見られることも西沙せいさは嫌う。それは今でも変わらない。ただの気休めとは思いながらも、初めてカラコンを付けた時の安心感はいまだに西沙せいさの気持ちをしばり付けていた。

「……嫌だね……こういうの……気持ちのどっかでは分かってるのにさ…………」



      ☆



 ────古い伝承でんしょうがあった。

 その地方では一番の規模をほこる神社。

 そのやしろまもる一家の中で一番の〝力〟を持つ巫女みこがいた。

 その巫女みこが新しい神社を作る。

 理由は〝き物〟もしくは〝はらい事〟専門のやしろの立ち上げ。

 そして作られた御陵院ごりょういん神社は代々女系で引き継がれてきた。しかも必ず三姉妹。それが崩れたことはないという文献ぶんけんが残っている。

 現在の当主であるさきも、三姉妹の三女として神社を継いでいた。

 二人の姉は別の神社へと嫁いだ。必ず一人が継がなければいけないというわけではなく、それまでは二人や三人で継ぐこともあった。

 そして神社を継いださきも三人の娘を産んだ。

 長女の綾芽あやめ、次女の涼沙りょうさ、そして三女の西沙せいさ────一年違いで歳が近かったせいか、幼い頃は仲の良い姉妹だった。

 さきの夫は婿養子むこようし宮司ぐうじではなく、経営側の裏方として神社を支えていた。

 過去の例に漏れず、さきの娘三人も幼い頃からかんの鋭いところがあった。その能力を維持させ、神社という特殊な環境でその能力を高めていくことがさきの仕事でもある。


 ある時、一組の家族が神社を訪れた。

 基本的に他の神社からの紹介がほとんどで、直接この神社にやってくる者は少ない。その家族も別の神社からの紹介だった。

 おはらいではなく祈祷きとう。家主が行方不明になったために探して欲しいとのことだった。嫁である妻と高校生の息子が二人。行方不明になっている夫の両親とで訪れる。警察に行方不明を届け出てすでに三ヶ月程が過ぎていた。

 咲は出来るだけこういった神事しんじには娘たちを付き添わせた。その日も小学生になったばかりの長女の綾芽あやめを筆頭に、五歳の涼沙りょうさ、四歳の西沙せいさの三人は本殿の祭壇さいだんから少し離れた所で、少し大き目の子供用の巫女みこ服に身を包んで一連の流れを見ていた。まだ三人とも着慣れてはいない。

 しかし祈祷きとうを始める前の時点で、さきは疑念を抱いていた。


 ──……この奥さんは、何かを隠している…………


 一通りの祈祷きとうを終わらせたが、さきの疑念は消えない。しかしその詳細は見えなかった。さらなる祈祷きとうでより深い所を探る必要性を感じていた。


 ──……後二日は欲しいというところか…………


 さきは行方不明の夫の両親だけを別室に迎え入れて話を聞くことにした。

「お答え頂ける範囲で構わないのですが…………ご両親から見られた感想で構いません。ご夫婦仲のほうは……どのように見られておりましたでしょうか…………?」

 そのさきの言葉に、母親のほうが目を逸らした。すると父親が意を決したように話し始める。

「……実は……あまり良くはありませんで…………お恥ずかしながら息子が何年か前に浮気をしまして…………それから夫婦仲は冷めていたようです。孫たちは何も知りません。そして行方不明になる少し前にも新しい浮気をしてたのがバレたらしくて…………」

 父親は額の汗をハンカチで拭きながら視線を落とした。汗が首筋を流れ落ちていく。季節はまだ春。この日もやはり春らしい陽気。気温も湿度も決して高くはない。

 すると横の母親が、弱々しく言葉を繋げる。

「嫁が…………興信所に調べさせていたみたいで…………」

 その言葉をさきさえぎる。

「結論部分は分かりませんが…………私の見えたイメージは大きな橋です。だいぶ山奥ですね。真っ赤な橋と、その両サイドにはお地蔵様が一体ずつ…………どちらも真っ赤な頭巾ずきんを被ったお地蔵様です。夜…………奥様と、もう一人の男性……おそらく…………私の名前を出して構いませんので、改めて警察のほうにお伝え下さい」

 さきは二人を本殿に戻し、家族が本殿を出ようとした時、立ち上がったのは西沙せいさだった。

 その衣擦きぬずれの音にさきが気が付いた時には、遅かった。

 西沙せいさの声が本殿に木霊こだまする。

「その人が殺したよ」

 家族の足が止まり、空気が凍りつく。

 西沙せいさは右腕をまっすぐ上げて嫁を指差して続ける。

「橋から落として殺したの。まだ旦那だんなさんはそこにいるよ」

 翌日、妻が自ら警察に自首する。その日の内に夫の遺体が発見された。

 浮気をしていたのは夫だけでなく、妻も同じ。その妻が浮気相手と共に行った犯行だった。やがて浮気相手も殺人教唆きょうさの疑いで事情聴取を受けることになる。


 そしてその夜、さき西沙せいさを問い詰めた。

「何か、見えたのですか?」

 出来るだけ穏やかに話しているつもりでも、さき祭壇さいだん蝋燭ろうそくあかりに照らされた自分の表情に自信がなかった。正面に小さく正座をする西沙せいさに、無意識の内に何かを見透かされるような、なぜかそんな気がした。

 そんなさきの気持ちを知ってか知らずか、西沙せいさは平然と応える。

「うん」

祈祷きとうの時?」

「ちがうよ。その前」


 ──…………前……?


西沙せいさ…………見えたからと言っても、すぐに口にしてはいけない時もあるのですよ」

 あの時、高校生の息子が二人いたことをさき危惧きぐしていた。その精神的な影響はどれほどだろうかと不安があった。


 ──……とは言え、結論は同じか…………


 さきが続ける。

「これからは、お母さんに先に伝えてくれますか?」

「うん。いいよ」

 そう応える西沙せいさに、わずかながらさきは、胸の中の何かがうずいた。


 ──……この歳で…………この子は何もせずに見えている…………


 さきも三姉妹の内で一番の能力を誇り、唯一ゆいいつ、一人で神社を継いだ能力者。二人の姉との確執かくしつすら生まれなかった。姉のほうから継ぐことを勧められたほど。

 それでも幼い頃から数々の修行を積んできた結果でもある。中学を卒業してからは荒業も経験させられる。その上で現在の能力を手に入れた。

 幼い頃に特にかんの鋭い期間というものが存在することは往々おうおうにしてある。何もしなければその能力が薄れていくことはよくあること。さきのような立場の人間は修行でその力を維持、そして高めていく。

 そのさきでも西沙せいさほどの力を見たことはなかった。

 逆に、修行をさせることでどこまで能力が高められるのか興味も沸く。


 それから数年。

 西沙せいさは一〇歳。小学四年生になっていた。

 修行の始まる年齢でもある。すでに二人の姉は日々をいそがしくしていた。

 しかし西沙せいさは修行もせずに相手がどんな人物なのかを言い当てていた。その人の過去だけでなく未来も見える。さき常々つねづね、小学校では出来るだけその能力を見せないように西沙せいさに指示していた。それでも完全には隠し通すことは出来ず、西沙せいさは完全に孤立こりつ。友達を作ることが出来ないままだった。

 見えない〝誰か〟と突然会話を始め、時には見られたくない心の内を言い当てられる。そんな西沙せいさに近付こうとする同級生は一人もいなかった。

 誰からも気持ち悪がられ、やがてイジメの対象となっていく。

 西沙せいさはその能力の強さからか、気が付いた時にはいつも一人だった。子供にとって西沙せいさの力は〝驚愕きょうがく〟するものではなく〝脅威きょうい〟でしかない。〝おそれ〟が〝排除はいじょ〟という概念がいねんを生み、それは〝気持ちの悪い〟ものへと変化し、そして〝いじめ〟へと広がっていく。

 そして西沙せいさが、初めて明確に自分の力に恐怖したのもこの頃だった。

 とある平日の午後、急遽きゅうきょ小学校が休校になる。学校の連絡網をテレビ報道がおぎなう。

 四年生から六年生までの生徒五人が次々と二階の窓から飛び降りたという。全員が病院に運ばれて重症のまま。地元のマスコミは〝集団ヒステリー〟〝集団パニック〟として報道を始めていた。

 綾芽あやめ涼沙りょうさはすぐに帰宅したが、西沙せいさが戻らないままさきが学校に呼び出された。

 生徒が飛び降りた時の目撃者として、西沙せいさは数人の生徒と共に学校で警察の聴取ちょうしゅを受けていた。


 そしてその夜、話をしたがったのは西沙せいさ

 西沙せいさは本殿に母のさきを呼び出す。

 さきとしては真相を知りたい気持ちももちろんあったが、西沙せいさおびえた表情に、一晩休ませようと考えていたほど。正直、西沙せいさに呼び出された時は少し驚いた。

「今日のこと? 友達だったのですか?」

 さき西沙せいさが学校でどういう境遇に置かれているのかまでは知らない。祭壇さいだんを背に座りながら、さきうつむ西沙せいさに優しく声をかけた。

「とりあえずしばらくは学校もお休みになるみたいですから、三人でゆっくり休みなさい」

 さきにも聞き出したいことは幾らでもあったが、今は過剰な刺激を与えることが得策とはやはり思えない。西沙せいさが神経をたかぶらせていることを感じていたからだ。明らかにおびえも見える。

 それでも、何か〝別の存在〟も感じていた。


 ──…………何を、した……


 すると、西沙せいさがゆっくりと口を開く。

「…………あの五人…………私をイジめてた………………」

 震える声。

 そのか細い声に、さきは小さく息をいた。

 しばらく考えてから口を開こうとした時、先に西沙せいさの言葉が飛び出す。

「────あの時もイジめられてた…………」

 さきの中に嫌な感覚が湧き上がる。

 そして西沙せいさの声が続く。


「…………死んでしまえばいいと思った………………」


 その両目からは、大粒の涙がこぼれ落ちていた。

 詳細を聞き出してから、初めてさきは、西沙せいさが自覚していた事象じしょう把握はあくすることになる。

「……私は…………目を見ただけなの…………そしたら自分で窓を開けて…………」

 西沙せいさは、目を合わせるだけで相手の意識を操ることが出来ていた。そのため、いつの間にか西沙せいさは人と目を合わせないようにしていたという。

「……誰の目も見たくない…………みんな……私を怖がる…………」

 大粒の涙を流しながら、空気を震わせる声で西沙せいさがそう続けた。

 その西沙せいさが行き着いたのは、コントロール出来ないのは母親のさきだけだということ。

 綾芽あやめ涼沙りょうさは薄々かんづいていた。

 二人は西沙せいさとは完全に距離を置き始めていた。仲の良かったはずの姉妹関係は、すでに過去。

 今や西沙せいさが目を合わせられるのは母親のさきだけ。

 翌日、五人の生徒は一命を取り留める。

 さき西沙せいさに、他人と目を合わせないように指示するしかなかった。





 さきはあれ以来、連日、西沙せいさまじえて祈祷きとうを続けていた。

 そしてその過程で、西沙せいさの中に〝の念〟が蓄積していることには気が付いていた。しかしそれが西沙せいさにどんな影響を及ぼすのかは分からないまま。


 ──……この子は…………強すぎる…………


 西沙せいさも一〇歳という幼い年齢でありながら、自分が人と違うことは理解していた。しかしそれを受け入れるということは、普通に〝人間〟としては生きていけないことも意味する。

 さき祈祷きとう中、背後で両手の指を絡ませる西沙せいさからの圧力に恐怖した。


 ──……この圧力…………子供のものとは…………


 日々その圧力は大きくなっていった。

 同時に綾芽あやめ涼沙りょうさの修行も続けなくてはならない。とはいえ、まだ小学生の内は荒業というわけではなく、精神的な集中と知識の集積に重きが置かれている。

西沙せいさは危険です」

 本殿裏の準祭壇じゅんさいだんでその日の修行を終えたばかりの綾芽あやめが、突然そんなことを口にした。

 さきも口にこそしなかったが、その言葉の意味は綾芽あやめの感情と共に理解出来る。それでもさきは優しくさとすように返した。

綾芽あやめ……おのが妹にそのような────」

「あの五人…………私と涼沙りょうさが介入していなければあの場で死んでいました」

 さきの言葉をさえぎるかのような綾芽あやめの口調は、低く、強い。

 さきはすぐには返せなかった。

「…………二人が…………救ったと…………」

 そう返すのがやっと。


 ──……私は…………とんでもない後継を産んだのか…………


 次いで口を開いたのは綾芽あやめの隣の涼沙りょうさ

「母上、私は……西沙せいさが怖い…………」


 すでに学校は再開されていた。

 それでも一向に学校に来ない西沙せいさのことで、噂話うわさばなしだけが先行する。

 西沙せいさの〝黒いうわさ〟。

 あの場にいたことはすでに知れ渡っていた。しかもあの時、いつものように西沙せいさいじめにっていたことも周知の事実。しかし当然のことながら非科学的な〝黒いうわさ〟と五人の飛び降りを学校が結びつけるわけもないまま、小柄で華奢きゃしゃ西沙せいさ噂話うわさばなしばかりが蔓延まんえんしていく。

 まして神社の娘。オカルト好きな年齢の小学生が飛び付かないわけがなかった。

 以前から自分は周囲に嫌悪けんおされている存在だと感じていた西沙せいさは、今回の件で自分の存在価値を見出すことが出来なくなっていた。


 ──……私は…………人を傷つける存在…………


 西沙せいさが学校に再び戻る決断をしたのは、決して自発的なものではない。もちろんそれはさき進言しんげんだった。

 西沙せいさは常日頃から人と目を合わせないように、下を向いて歩くくせがある。それでも周囲の状況は、なぜか見えていた。それは無意識の内に発揮されていた西沙せいさの能力の一つ。

 いつもは周囲の状況が見えているとは言っても、やはり精神的な疲労と不安が西沙せいさの能力を不安定なものにしていたのだろう。

 それでも横断歩道の信号の色は、視界に入る周囲の人々の足の動きで判断することも出来る。

 その時はたまたま周りに誰もいなかった、だけ。

 顔を上げれば赤信号かどうかは確認できる。しかし西沙せいさは止まることなく横断歩道の白線を辿たどる。

 何も考えてはいなかった。

 突如とつじょ、横から聞こえるクラクション。

 驚いて体を戻すも、その時、西沙せいさは反射的に顔を上げていた。

 道路の向かい、驚いて西沙せいさを見る人と、目が合う。

 その人はフラフラと車道に進み出た。周囲にクラクションが鳴り響き、その歩行者の直前で車が止まる。

 西沙せいさの目には見えていた。

 その歩行者の体に謎の黒い影がからみつく。


 ──…………なに……?


 西沙せいさは神社まで走り、さきひざで崩れるように泣き続けた。

 ただ、怖かった。

 結局、学校に戻ったのはそれからおよそ一週間後。

 もちろん生徒たちの間では〝黒いうわさ〟は収まってなどいない。西沙せいさは以前にも増して空気の重さを感じていた。まるで学校自体が別の空間のようだ。

 しかし当然のように、そんなうわさに教師たちは辟易へきえきしていた。

 さきは他人と目を合わせられない西沙せいさのことを、学校には病気だと説明していたが、それをただの〝人見知り〟だからと強引に強制しようとする教師もいた。自分が間違っているなどとは微塵みじんも考えてはいない。しかも同じように考えていた教師は一人だけではなかった。

「では……御陵院ごりょういんさん、黒板のこれを読んでください」

 五〇代の男性教師だった。

 その教師は返事の無い西沙せいさにさらにたたみかける。

「立ちなさい」

 西沙せいさはやっと立ち上がるも、顔を上げようとはしない。

「顔を上げなさい!」

 教師の張り上げたその声に、西沙せいさの中の何かが崩れた。


 ──………………やめて…………


 ゆっくりと、西沙せいさの顔が上がる。

 やがてその目は、黒板ではなく、教師の目に向けられた。

 途端に、教師の全身が黒い影におおわれて見えた。

 教師の表情が変わる────怯え、全身に汗を吹き出させた教師は廊下に飛び出し、廊下の窓から身を乗り出す。

 それをたまたま通りがかった別の教師が慌てて止めた。

 それからは、教師も、さらには生徒も、誰とも目を合わせようとしない西沙せいさに対して、れ物に触れるように接していった。

 そして、総てが、西沙せいさを追い詰めていく。





 西沙せいさが中学校に入った年、綾芽あやめは三年生、涼沙りょうさは二年生。

 西沙せいさは小学校も結局あまり通わないままに進学したが、付近の三つの小学校から生徒が集まるため、当然のように西沙せいさうわさは引き継がれる。同じ小学校だった生徒は西沙せいさを恐れて近付かなかったが、それがかえって西沙せいさうわさ尾鰭おひれを付け加えていく。

 そしてこの頃になると、西沙せいさは目を合わせるだけではなく、手をかざすほうが相手をコントロールしやすいことに気が付いていた。猫や犬でそれを確かめるも、それ以上踏み込むことも出来ないまま、ふくれ上がるのは自分への〝恐怖〟だけ。

 そして中学校でもいじめは継続された。

 西沙せいさの不登校が続く。

 時だけが流れ、やがて三年生。

 すでに中学を卒業した綾芽あやめ涼沙りょうさは神社を継ぐことを決意し、高校には進学せずに本格的な修行の日々に移行していた。

 ある日、久しぶりに西沙せいさが登校した日。

 廊下を歩くだけで、周りからの〝冷たい意識〟を感じる。視線を落としているにも関わらず、西沙せいさの無意識の能力は西沙せいさに周囲の状況を理解させた。

 見たくない。

 感じたくない。

 西沙せいさは自分で操ることの出来ない自らの能力に嫌悪感けんおかんを感じ続ける。常にその感情は西沙せいさの意識をおおい尽くしていた。

 小さな声も聞こえてくる。

 それは決して西沙せいさが聞きたい言葉ではなかった。


    〝 バケモノがきた 〟

        〝 人間じゃない 〟

           〝 近付いたら殺される 〟


   〝 ── 人殺し ──── 〟


「あ、バケモノだ」

 聞き慣れた声。

 いじめグループの一人の声。同じ小学校の子の声。

 聞き間違うはずもない。


「人殺しが来た」


 その声に、西沙せいさは足を止める。

 無意識に顔を上げた。

 首を回す。

 声の主を見付けると、その目を見つめていた。


 一人が、二階の窓から飛び降りる。


「人殺し────」

 その声に振り返った西沙せいさは、右手を後ろに振り払った。


 一人が、壁に体を叩き付ける。


 周囲から悲鳴が上がった。


 そして、午後にさきが学校に呼ばれる。

 もちろん、物理的な証拠があるわけではない。西沙せいさが直接触れたわけではない。教育現場では心理的なものとして片付けるしかない。

 しかし、その中心にいるのは間違いなく西沙せいさ

 さきは分かっていた。

 もちろん自分の娘を疑いたくはない。

 しかし感じたものは、母としての感情を崩していくだけ。


 当然、綾芽あやめ涼沙りょうさ西沙せいさを疑う。

 物理的な証拠はなくても、これまでの経緯を考えると二人からの疑いももっともと言えた。

 深夜までの荒業を終えた日の夜、綾芽あやめ涼沙りょうさは母のさきを捕まえる。本殿裏の準祭壇じゅんさいだんの前で最初に口を開いたのは綾芽あやめだった。

西沙せいさには……〝へび〟がついています…………」

「あなたは……それを見たのですか?」

 さき毅然きぜんをした態度を崩さない。

 二人が西沙せいさに対して距離を置いていたことはさきももちろん気が付いていた。それに対して仕方がないと判断することは簡単だろう。西沙せいさのそれまでのことを考えれば当然とも思える。

 しかし〝母としての自分〟もいる。

 西沙せいさに恐怖しながらも、遠ざけたくはなかった。

 しかし綾芽あやめも負けずに応える。

「……いえ…………何度も感じました」

「あなたの程度で感じたものなど────」

「いえ母上」

 そう言ってさきの言葉をさえぎった綾芽あやめが続ける。

西沙せいさには何かがいています…………本殿に入れるべきではありません…………」

 さきも気が付いていないわけではなかった。


 西沙せいさの中学校の卒業までは残りわずか。

 事件から丸二日。

 さきは一人、西沙せいさだけを本殿裏の祭壇さいだん前に座らせて祈祷きとうを続けた。

 そこは本殿の中心となる本祭壇ほんさいだんとは別の準祭壇じゅんさいだん秘儀ひぎ密儀みつぎに使われる所。

 絶対に綾芽あやめ涼沙りょうさには関わらないように伝え、さき西沙せいさは睡眠も取らずにただただ祈り続けた。


 どれだけの時間だったのだろう。

 もはやさきにも時間の感覚は無い。

 やがて、さきの背後で西沙せいさが倒れる音。

 そして、やっとさき呪禁じゅごんを止めた。

 西沙せいさが荒い息と共にうめき声を上げながら体を起こす。巫女みこ服の衣擦きぬずれの音が、西沙せいさの荒い息をわずかに隠した。

 さきいまだ背中を向けたまま、小さく息を吐く。

 そのさきが口を開いた。

西沙せいさ…………あなたの〝力〟を半分まで押さえました…………今までのように能力を発揮することは出来ないでしょう……もう人と目を合わせても今までのように操ることは出来ないはず…………それでも、あなたの力は強過ぎる…………しかしあなたにいたものが何者であっても、私の力には反発出来ない…………」

 さきは体を後ろに回す。

 西沙せいさは苦しそうに両手を着いて肩で息をしていた。

 その西沙せいさの〝ひとみ〟がさきを見上げる。

 元からさきだけは操られないはず。それでもさきの中に生まれたのは〝おそれ〟ではなく〝おそれ〟。

 そのさきが、続けた。

西沙せいさ…………事実とは曲げられないものです…………行ったこと、終わったこと、いずれも受け入れるだけです…………そして、この世の中にはあなたを良く思わない者が多くいます。あなたをここに出入りしている税理士の立坂たてさかさんに預けます。そこから高校に通いなさい。これからあなたは、その力を使って人を助けることになるでしょう。そして…………あなたを助けてくれる人も必ず現れます」

 そう言うさきの目を、西沙せいさは見つめ続けていた。






 それから、およそ五年────。

 高校卒業と同時に開設した心霊相談所も、すでに二年。

 名義としては西沙せいさの身元引受人の立坂たてさかが立ち上げた事業ということになっていた。

 それと同時に、立坂たてさか美由紀みゆきの身元引受人も引き受ける。これは西沙せいさからの要望だった。美由紀みゆきが幼い頃から孤児院こじいんで生活してきたことと、西沙せいさとしては自分の近くに置くことで美由紀みゆきを〝守りやすく〟したかった。西沙せいさは相談所の隣の古いアパートの一室で暮らしていたが、今は隣の部屋に美由紀みゆきを住まわせている。高校の卒業と同時だった。

 立坂たてさかも事情を聞いてこころよく受け入れた。

 その立坂たてさかの税理士という仕事について西沙せいさは決して詳しくはなかったが、仮にも立坂たてさか自身も税理士事務所の経営者。それなりに様々な所に顔が広くなる職業なのだろうとは思っていた。そのお陰か、しばらくは立坂たてさか斡旋あっせんでの客がほとんど。

 しかし去年の秋に関わった仕事は別だった。

 西沙せいさが初めて、自ら関わった。

 当時マスコミが騒ぎ立て始めた〝悪魔祓あくまばらい事件〟────宗教法人の設立したホスピス内で悪魔祓あくまばらいが行われていたとするニュースは全国規模でマスコミの恰好かっこうのネタとなった。しかもその悪魔祓あくまばらいによって入所者が死亡したとの家族からの訴えに、まるであめに吸い寄せられるありのようにマスコミは群がる。

 そして、西沙せいさが関わった理由。それは母親のさきの存在だった。

 さきがホスピスの母体である宗教法人に関わっていたことが、西沙せいさを動かす。例え確執かくしつのある親子関係でも、西沙せいさにとっては母親がマスコミの餌食えじきになることは許せなかった。

 もちろん記者会見に出ることで顔を売りたかったのも事実。

 一時は全国規模でのニュースに取り上げられたが、それに比例するほど仕事が増えなかったのが現実。

 マスコミが一気に興味を失ったせいもあるのだろう。記者会見で発表された内容は、マスコミが求めていた結果とは大きくかけ離れていたもの。あれ以来、西沙せいさがマスコミに取り上げられることもほとんどなかった。


 そして、季節はすでに夏の始まり。


 そんな蒸し暑い朝の来客。

 入り口のガラス戸が開くことでエアコンの涼しい空気が外に弾き出されることすら嫌になりそうな、そんな日だった。

「いいですねえ、エアコン」

 そんな間の抜けた、それでいて嘘の無い声。

 フリージャーナリスト────水月杏奈みづきあんな

 入り口側の美由紀みゆきが、その顔を見るなりすぐに声を掛けるのがいつもの流れ。

「お久しぶりです。今日は冷たいのにしますね」

 そう言いながら椅子を降りる美由紀みゆきの背中に杏奈あんなが声を返していた。

「ああ、ごめんなさい美由紀みゆきちゃん」

 杏奈あんな西沙せいさ美由紀みゆきよりは少しだけ年上だったが、それでも二人には敬語を使う。仕事柄そうすることが慣れているというのもあったが、何より杏奈あんな自身が霊能力者としての西沙せいさに心酔していたからに他ならない。

 出会いは去年の秋。

 〝悪魔祓あくまばらい事件〟を杏奈あんなが追いかけていたことが切っ掛けだった。最終的にマスコミ向けの記者会見を開いたのは杏奈あんな西沙せいさ同様に顔を売りたかったというのは杏奈あんなも同じ。雑誌社を辞め、フリーになって最初の大きな仕事だったからだ。

「車にだってエアコンくらいあるでしょ?」

 そう言ってソファーの上で横になったままの西沙せいさが顔だけを向ける。

「そうは言いますけど────」

 すぐに返しながら西沙せいさの向かいのソファーに腰を降ろした杏奈あんなが続けた。

「燃費悪くなるじゃないですか。古い車なんでエアコンの効きも良くないし」

 仕事柄なのか、自他共に認めるボーイッシュなタイプだ。毎朝念入りに化粧して隣の古いテナントビルに出勤してくる西沙せいさとは正反対なタイプだろう。いつもノーメークに近いほど。常にジーンズとスニーカー。肩から下げているのは丈夫さだけが取り柄のような古いカメラバッグ。仕事道具とはいえ、少なくとも二〇代の女性が持ちたがるデザインではない。

「お互いに景気の悪いことで……杏奈あんなが貧乏神に見えてきたわ」

 西沙せいさがそう返した時、二人の目の前に美由紀みゆきの運んできたグラスが並ぶ。すぐにグラスを取り囲む水滴がコースターに滑り落ちていく。

「あ、どうも」

 反射的に応える杏奈あんな西沙せいさが続けた。

「ウチは麦茶くらいしか出ないけど今日はどんなネタ? まさかすずみに来たわけじゃないでしょ?」

 杏奈あんなが濡れたグラスを手に取る。麦茶を一気に飲み干した杏奈あんなが大きく息をいて応えた。

「いいじゃないですか。そんなに忙しくもないんですから」

「やっぱり貧乏神ねー。後で杏奈あんなの車をお札で埋め尽くしておかなきゃ」

 西沙せいさの言葉を流すように、杏奈あんなは濡れた手をグラス横に置かれたおしぼりで拭き、すぐにカメラバッグからタブレットを取り出して口を開く。

「まあまあ、一応オカルトネタ持ってきたんで」

「まだオカルトライターなんかやってるの? 稼げるならやめろとは言わないけどさ」

 そう返しながら西沙せいさ眉間みけんしわを寄せた。

 西沙せいさと出会ってから、杏奈あんなは仕事の一つとして雑誌のオカルト記事を請け負っている。いつの時代も定期的にオカルトブームというのはやってくるものだが、決して無くなることのないジャンルでもあると言えるだろう。元々杏奈あんなはその方面に明るかったわけではない。総ては西沙せいさとの出会いが切っ掛けだった。

「まあ……ちょっとだけ……ですけど」

 杏奈あんなはそう応えて笑顔で誤魔化ごまかすが、決して大きな収入になる仕事ではなかった。ネット用の記事もまとめていることを考えると割がいいとは言えないだろう。それでも、何より杏奈あんな自身の興味が仕事を続けさせていた。

 西沙せいさにもなんとなくそれは想像がつく。だからこそ杏奈あんなに何度も協力してきた。

 その西沙せいさが体を起こす。

 ソファーの肘掛けから足を降ろして麦茶を一口だけ飲み込むと口を開いた。

「で? 今回は?」

 そう言いながら、西沙せいさの目付きが少しだけ変化したのを向かいの杏奈あんなは見逃さない。

 杏奈あんなはその西沙せいさの〝目付き〟が好きだった。

「実は一年くらい前から続いてる話なんですけどね……もちろん私が知ったのは最近ですが……〝風鈴ふうりんやかた〟って、知ってます?」

 前のめりにそう応える杏奈あんなに、西沙せいさは上半身をソファーの背もたれに押し付け、足を組んで応える。

「へー……いいじゃない…………聞かせてよ」

 西沙せいさの目が、細くなる。

 口角を少しだけ上げ、そのすずしげな表情は、どことなく大人びて見えた。





       『 聖者の漆黒 』

             第一部「回起」第1話・終

                 第2話へつづく

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