第13話

「ただいまー」


 いつもより大きな声で帰宅する。


「おかえり、お兄ちゃん。なんか元気だね?」


 明莉が不思議そうに首を傾げる。


「今日、友達とLime交換したんだよ」


 友達とは、もちろん樋山さんだ。


“ま、間宮くん!ら、Lime交換しよう?”


 昼休みになった瞬間、樋山さんがLimeのQRコードを差し出してきた。

 俺は友達らしいことに緊張しつつも嬉々として交換した。


 ちょっと周囲の視線が痛かったけどね。実は樋山さんが家族以外の男子とLime交換するのは俺が初めてだったらしい。


「……それって、もしかしてその匂いの人?」


 その匂いて……。

 最近は何も言われなかったけど、やっぱり匂うんだな。

 まあ、放課後だけじゃなくて休み時間も一緒にいるようになったからな。


「そうだよ」


「ほ、本当に友達だよね!?か、彼女だったりしないよね!?」


 明莉の疑問を肯定すると、何故か明莉が焦りだした。


「違うよ。違うから落ち着いて」


 俺は明莉の頭を撫でて落ち着かせる。

 んー、樋山さんは明莉に何かしたのかな?お互いに面識ないし、そんなわけないけど。そう疑いたくなるほど、明莉が樋山さんを警戒している。


「今後彼女にする予定は?」


「ないよ」


 明莉の質問にきっぱりと答える。

 明莉はもしかして、男女の友情は成立しないとか思ってる?


 仮に俺が樋山さんのことを好きになったところで、樋山さんが俺のことを好きになることはない。


 つまり、男女の友情は成立します。


「ふーん……、あ、今度お家に連れてきてよ!挨拶したい!」


「お、いいよ。紹介するよ」


 ま、樋山さんがOKしたらの話だけど。


「あ、それと明日の放課後空いてる?」


「空いてるよ」


「冷蔵庫の中、無くなってきたから一緒に買いに行こ?」


 定期的に冷蔵庫の貯蔵が切れるんだけど、その時は明莉と一緒に買いに行くようにしている。


「おっけー。じゃ、いつも通りでいい?」


「うん。校門で待ってるね」


 明莉とは通っている高校は違うけど、そんなに離れてはいない。

 そして、明莉の方が学校が終わるのが早くて、俺の方が終わる頃には明莉は校門に着く。


「じゃあ、夜ご飯作ってくるね」


「うん、よろしく」


 あ、じゃあ明日は屋上行けないかあ。



◇◆◇◆◇◆



『明日、用事ができて屋上行けないんだけど、いい?』


 夜、俺はLimeを開き、さっそく樋山さんにメッセージを送る。

 すると、すぐに既読がつき返信が来る。


『いいよー』


 樋山さんから了承を貰えた。

 良かった。


『ありがとう!』


 俺は安心してスマホを閉じようした瞬間、通知音が耳に入る。

 樋山さんからだ。


 俺は再びLimeを開く。


「え?」


 俺は慌てて画面を見返した。


『おやすみ』


 うん。おかしいのはその下だ。


 ピンク色を基調とした可愛らしいパジャマを来た樋山さん。その樋山さんがカメラ目線に顔を赤くして笑顔でピースしている。

 そんな写真が送られてきたんだ。


 えぇ……、何これ。可愛い。可愛いんだけど、戸惑いが勝つ。

 どうして、急に写真なんて。


 ……いや、もしかすると今時の友達は自撮りを送り合うのかもしれない。


 うんうん。

 俺はベッドの上で一人頷いた。


 パシャ


 静かな部屋にカメラのシャッター音が響いた。

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