森を抜けて


「ルナさんや」

「何?」

「向こうに見えるのってまた森では?」

「うん。そうだね」


 ……森を抜けてまた森。どうやらここは山みたいだ。わからないけど。まあ上ったり下ったりしていたけど。


「その手前には川がある」

「あ、ホントだ」


 ルナが指差したほうを見るとそこには結構大きな川が見えた。向こう岸まで結構距離があるように見えるけど……あと見た感じ向こうに渡れるような橋とかもなさそうだ。


「結構大きいね」

「ん」

「向こうに渡れそうな橋とかもないわね」

「そうだね」


 どうやら私達の冒険はここで終わりのようだ。


 ……とまあ、冗談は置いておき。向こうに渡る橋はないけど、一応川にならう感じで道路が続いているのでここを進めばまだ行けそうかな。ただ、問題はどっちに行くか、なんだけど。


「あっちが山っぽいからこっち行けば下流?」

「たぶん」


 基本的に山から流れた来るだろうから反対側は下流で合っているはず。で、そんな下流は海とか湖とか…ん…とりあえず大きな水のたまり場? に繋がっているはずなので下れば出られるかもしれないわね。


「川の流れを見た感じでも向こう側が下流っぽい?」

「だと思う。わからないけど……」

「いや普通は逆に流れることはないよね」

「それはそう」

「じゃあこっち側行ってみよっか」

「ん」


 ルナが頷いたので左側に行くことにする。まあ、違ったら最悪来た道を戻ればいい訳だし問題ない。別に時間は無限に近いほどある訳だし。

 燃料とかも補給したばかりだし、全然余裕である。予備タンクもあるし問題ない。


「にしても、この川大きいね」

「うん」


 川の名前は何だろうか? あったところで人が勝手に付けた名前なので本当の名前ではないけど。そもそも自然に出来るから名前がないというのが正しいのかな。


 キャンピングカーに戻って運転を再開させ、走りながら呟く。長さはまだわからないけど、面積自体は結構広いんじゃないかな。


 因みに走っている道路は森の中? にあった道路よりはだいぶマシで走りやすいものとなっている。それでも所々傷んでいるからか車が揺れることがあるけれど。

 こんな世界じゃ仕方がないことだけども。だって舗装する人も修理する人も、それを見つける人も居ないのだから。


 まあ、見つけること自体は私達が居るけどね。

 でも直せるかと聞かれればノーである。私のそんな知識があるはずもない。……車の整備とか自分の持っている知識を応用したり考えたりすれば出来るかもしれないけど、それをやったところでどうするのって話になるわね。


 基本的に来た道を戻ることはないのだし。道を間違えたとしても道路があるならば進むだけである。この終わった世界を旅しているのだから。


「ルナはさ。こんな私と旅して楽しい?」

「うん。楽しい」

「そ、そっか。それは良かった」


 即答されたのでちょっと驚いたけど、そう思われているのなら良かったかな。不思議と嬉しい気持ちになる。

 なんやかんやでルナとは結構長い付き合いだなあ。最初会ったときは驚いたけれど……前にも言ったかもしれないけど、ルナは初めて会った当初はボロボロで今にでも息絶えそうな状態だったのだから。


 別に病気とかそういうのではなかったから何とかなったけど。病気でも一般的に知らているやつなら何とかなったかもしれないけどね。一応、服用薬とかも使用期限を見つつ常備してあるし。


 とはいえ、そろそろ使用期限が切れそうなものもあるし、最終的には全て切れちゃうんだよね。そうなったらもう薬に頼ることはできなくなるわね。

 新しい薬も作られないから使用期限が伸びるなんて言うのもないし……そっち方面のことも今後考えていかなきゃなぁ。

 一番は病気とかにならないことだけど……ああいうのはいきなりかかるようなものだし、どうしようもない。実際予防接種してもかかる時はかかる訳なのだから。


「スフィアは楽しいの?」

「楽しいよ。ルナと居れることもね」

「そ、そうなんだ……」


 話が逸れてしまったけどルナと一緒にいる時間は楽しい。

 そろそろ自覚しないといけないのかもしれない。まあ、薄々というか一応自覚はあった訳だけど……。


 それは今はいいかな。

 このまま一緒に旅ができれば、それで。



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